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2014 年度 実績報告書

白色脂肪ー褐色脂肪間の機能連携を司る、新しい生体内恒常性制御システムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 26893102
研究機関信州大学

研究代表者

河手 久香  信州大学, 医学系研究科, 研究員 (20507503)

研究期間 (年度) 2014-08-29 – 2016-03-31
キーワード病態医化学
研究実績の概要

アドレノメデュリン(AM)は、心血管系をはじめ、全身の組織で産生される多彩な生理活性を有するペプチドである。AMの受容体CLRには、受容体活性調節タンパクRAMPが結合し、受容体機能を制御している。我々はこれまで、RAMPの中でもRAMP2が、心血管系におけるAMの機能調節に中心的役割を果たすことを報告してきた。一方、AMおよびRAMP2は脂肪組織においても高発現を認めるが、その代謝制御における意義は明らかでない。
RAMP2ホモノックアウトマウスは胎生致死のため、本研究では成体の得られるRAMP2ヘテロノックアウト(RAMP2+/-)マウスを用いて、高脂肪食負荷による肥満誘導時のAM-RAMP2システムの役割を検討した。8週齢雄マウスに10週間の高脂肪食負荷を行ったところ、RAMP2+/-では、野生型と比較して体重増加が見られた。RAMP2+/-では、血清インスリンとレプチン値が高く、アディポネクチン値は低下し、インスリン抵抗性が見られた。また、白色脂肪組織の重量増加、脂肪組織へのマクロファージ浸潤、炎症性サイトカインの発現亢進を認め、肝臓では脂肪肝や線維化が亢進した。
次に脂肪細胞におけるRAMP2の役割を検討するため、aP2CreマウスとRAMP2floxedマウスを交配して、脂肪細胞特異的RAMP2ホモノックアウトマウス(A-RAMP2-/-)を樹立した。通常食下において、A-RAMP2-/-は野生型と比較して4週齢頃から体重が増加し、白色脂肪組織の重量増加と線維化が見られた。
以上の結果から、AM-RAMP2システムは心血管系機能制御と同様に、糖・脂質代謝制御や脂肪細胞分化においても重要な役割を持つことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス作出に成功し、これを用いることで、白色脂肪組織におけるRAMP2の病態生理学的意義の解析を、当初の計画通りに遂行した。

今後の研究の推進方策

初年度の研究成果に基づき、2年度は、A-RAMP2-/-を用いて褐色脂肪組織の検討を進める。褐色脂肪細胞が豊富に含有し、エネルギー消費に中心的役割を果たすミトコンドリアに着目し、A-RAMP2-/-の褐色脂肪細胞のミトコンドリアの数、形態、機能を野生型マウスと比較する。褐色脂肪組織からミトコンドリアを単離し、溶存酸素計によりミトコンドリアの呼吸活性を測定する。肝臓や骨格筋のミトコンドリア呼吸活性についても同様に検討する。
UCPは、ミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化反応を脱共役させ、エネルギーを熱として散逸する。褐色脂肪組織のUCPであるUCP1は、その活性低下と肥満症との関連が示唆されている。申請者のこれまでの検討では、心筋細胞におけるAM-RAMP2系は、ミトコンドリアの制御にも関わり、UCP3の発現を亢進させることが明らかとなっている。このため脂肪細胞においても、UCPを介したエネルギー消費に関わっている可能性がある。本研究ではA-RAMP2-/-の褐色脂肪細胞のUCP1の発現や機能を検討する。
最近、第三の脂肪細胞として、ベージュ細胞の存在が注目を集めている。ベージュ細胞は、褐色脂肪細胞様の形態をとるが、古典的な褐色脂肪細胞とは異なり、非myf-5系列由来の白色脂肪から発生する熱産生細胞であり、マウスでは鼠径部皮下脂肪組織の中に多く存在するとされる。RAMP2ノックアウトマウスは、皮下脂肪の肥大と線維化をおこして皮膚が硬化し、老化現象に似た組織像を示す。そこで鼠径部皮下脂肪組織におけるUCP1発現、脂質代謝やβ酸化関連因子などの発現変化、炎症細胞浸潤、酸化ストレス、細胞外マトリックスの組成の変化やメタロプロテアーゼ活性、老化マーカーとされるp53, p21などの活性化レベルを評価する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Adrenomedullin-RAMP2 system suppresses ER stress-induced tubule cell death and is involved in kidney protection2014

    • 著者名/発表者名
      Uetake R, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Iesato Y, Yoshizawa T, Koyama T, Yang L, Toriyama Y, Yamauchi A, Igarashi K, Tanaka M, Kuwabara T, Mori K, Yanagita M, Mukoyama M, Shindo T
    • 雑誌名

      PLoS One.

      巻: 9 ページ: e87667

    • DOI

      0.1371/journal.pone.0087667.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Functional differentiation of RAMP2 and RAMP3 in their regulation of vascular system2014

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi A, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Igarashi K, Toriyama Y, Tanaka M, Liu T, Xian X, Imai A, Zhai L, Owa S, Arai T, Shindo T.
    • 雑誌名

      J Mol Cell Cardiol.

      巻: 77 ページ: 73-85

    • DOI

      10.1016/j.yjmcc.2014.09.017.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Pathophysiological roles of adrenomedullin-RAMP2 system in acute and chronic cerebral ischemia2014

    • 著者名/発表者名
      Igarashi K, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Yamauchi A, Toriyama Y, Tanaka M, Liu T, Xian X, Imai A, Zhai L, Owa S, Arai T, Shindo T.
    • 雑誌名

      Peptides

      巻: 62 ページ: 21-31

    • DOI

      10.1016/j.peptides.2014.08.013.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] アドレノメデュリン受容体システムの機能分化と、血管・リンパ管の制御機構2014

    • 著者名/発表者名
      山内啓弘、桜井敬之、神吉昭子、新藤優佳、河手久香、五十嵐恭子、鳥山佑一、田中愛、劉甜、羨鮮、Zhai Liuyu、荒居琢磨、新藤隆行
    • 雑誌名

      リンパ学

      巻: 37 ページ: 57-61

  • [雑誌論文] アドレノメデュリン-RAMP2システムによる、白色脂肪、褐色脂肪の脂質、エネルギー代謝制御2014

    • 著者名/発表者名
      神吉昭子、桜井敬之、河手久香、新藤優佳、植竹龍一、山内啓弘、五十嵐恭子、鳥山佑一、田中愛、劉甜、羨鮮、今井章、Zhai Liuyu、大和慎治、新藤隆行
    • 雑誌名

      血管

      巻: 37 ページ: 135-139

  • [雑誌論文] 血管、臓器恒常性を制御する生体内システム、アドレノメデュリンとその受容体活性調節システムの病態生理学的意義2014

    • 著者名/発表者名
      新藤隆行、桜井敬之、神吉昭子、新藤優佳、河手久香、小山晃英
    • 雑誌名

      日薬理誌

      巻: 143 ページ: 232-235

  • [学会発表] アドレノメデュリン-RAMP2システムは、白色脂肪-褐色脂肪間の脂質、エネルギー代謝を制御する2015

    • 著者名/発表者名
      神吉昭子、桜井敬之、新藤優佳、河手久香、山内啓弘、五十嵐恭子、鳥山佑一、田中愛、劉甜、羨鮮、今井章、Liuyu Zhai、大和慎治、新藤隆行
    • 学会等名
      第44回日本心脈管作動物質学会
    • 発表場所
      香川、高松センタービル
    • 年月日
      2015-02-06 – 2015-02-07
  • [学会発表] アドレノメデュリン-RAMP2システムは、白色脂肪―褐色脂肪間の脂質、エネルギー代謝バランスを制御する2014

    • 著者名/発表者名
      神吉昭子、桜井敬之、新藤優佳、河手久香、劉甜、羨鮮、今井章、Liuyu Zhai、大和慎治、新藤隆行
    • 学会等名
      第18回日本心血管内分泌代謝学会
    • 発表場所
      横浜、横浜市開港記念館
    • 年月日
      2014-11-22
  • [備考] 信州大学大学院医学系研究科 疾患予防医科学系専攻 循環病態学教室

    • URL

      http://www7a.biglobe.ne.jp/~shindo/

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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