研究実績の概要 |
世界的に増加している発達障害の原因は未だ明らかではない。遺伝医学的な側面と胎児期および周産期の脳障害の両面が関与しているとされているが、脳障害に関する報告は少ない。周産期ストレスの有無と脳障害との関連、それらと発達障害のタイプとの関連を明らかにすることが、発達障害の原因と病態解明に重要であると考えた。微細脳障害のうち予防可能な周産期ストレスが明らかになれば、周産期医療へのフィードバックと発達障害の発症の予防に寄与することができる。 本研究はエコチル調査の独自調査として計画され、信州大学医学部医倫理委員会の承認済みである。伊那中央病院で出生し、あらかじめ保護者の同意を得た小児のうちで、研究開始前に既に同意のもと採取・冷凍保存済みであった検体を使用した。 1.対象児のデータベース登録を行った。2.保存された血清の一部で以下の項目をELISA法にて測定した。(1)神経軸索障害マーカーであるニューロフィラメント‐H型(2)中枢神経系の炎症時に破綻する血液脳関門の障害因子であるMMPー9(3)MMP-9の阻害剤であるTIPM-1 3.脳障害の原因としての炎症機転の関与の解析のため、免疫学的パラメーターとして血清中のサイトカイン(IL-2, IL-4, IL-6, TNF-alfa、IFN-gamma、IL-17A)を、磁気ビーズを用いたフローサイトメトリー法によって測定した。4.上記をもとに周産期脳障害プロファイリングを完成させた。5.1歳半になった児から順次発達評価を開始した。1歳半検診のデータの市町村からの取り寄せに関する説明書と同意書を対象児の保護者に送付し、同意の得られた235名の対象児の検診データ(医師による診察所見、日本語版M-CHAT項目、独歩が可能かどうか、有意語の出現の有無等)を取得した。6.以上のバイオマーカーおよびサイトカインの測定結果と対象児の1歳半健診のデータを用いて解析を行った。
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