研究課題
平成27年度では、ガスクロマトグラフィータンデム質量分析(GC/MS/MS)による危険ドラッグ、特に合成カンナビノイド類の位置異性体識別法の構築を引き続き行った。研究初年度で対象としていた成分のうち、ナフトイルインドール骨格を有し、ナフタレン環の位置異性体を有する合成カンナビノイドJWH-122(メチル基)およびJWH-210(エチル基)においては、位置異性体間におけるフラグメントパターンの違いについてさらに追求した。アルキル側鎖の長さの違いによって、フラグメンテーションの経路の方向に差が生じ、そのフラグメンテーションの経路の際は、主として、官能基の立体構造に基づくものと推定された。最終年度の主たる目標は、合成カンナビノイドの水酸化代謝物の水酸基の位置決定法の構築であった。モデル化合物としてJWH-018を選択し、インドール水酸化代謝物を対象成分とした。初年度同様に、シングルスキャンモードによる電子イオン化(EI)分析を行い、フラグメンテーション解析を実施した後、異性部位に相当するイオンをプリカーサーイオンとしてEI-MS/MSを行った。得られたプロダクトイオンスペクトルから、各異性体に特徴的なプロダクトイオンを用いてSRMトランジションを設定し、水酸基位置決定法を構築した。JWH-018をマウスに腹腔内投与し、膀胱から直接採取して尿試料を用いてSRM分析を行ったところ、主たるインドール環水酸化体は6-OHであることが示唆された。また、インドール環の水酸化は4あるいは7位では起こりにくいものと考えられ、これは立体障害の影響が示唆された。以上の結果、本手法は水酸基位置決定法として有用であり、さらに、MAM-2201などのようにプリカーサーイオンが共通構造の合成カンナビノイドであれば、標準品を用いることなく水酸基の位置を決定することが可能であると考えられ、合成カンナビノイドの代謝経路の特定に極めて有効な分析法であると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Mass Spectrometry
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Forensic Toxicology
10.1007/s11419-016-0317-x