研究課題
IgG4関連疾患は、さまざまな臓器でIgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う全身性炎症性疾患として定義されている。IgG4関連疾患の一つとして下垂体炎が2004年に報告された。IgG4関連疾患の原因は不明だが、障害臓器にT細胞・B細胞の浸潤があること、HLAの特定の血清型や自己免疫と関連する遺伝子の一塩基多型と発症との相関があることから、発症において自己免疫機序の関与が考えられる。実際に、IgG4関連膵炎では自己抗原・自己抗体がいくつか報告されてきた。一方、IgG4関連下垂体炎における有力な自己抗原・自己抗体の報告はない。本研究ではIgG4関連下垂体炎患者血清および臨床的に鑑別を要するコントロール疾患患者の血清を対照群として、蛍光抗体法による抗下垂体抗体の有無を評価した。その結果、17例中5例のIgG4関連下垂体炎患者血清中に下垂体特異的な自己抗体が存在することが明らかとなった。一方、コントロールとして検討した対照群17例では全例下垂体に対する自己抗体は認められなかった。次に、蛍光二重染色により抗下垂体抗体が認識する標的細胞を検討した結果、抗下垂体抗体は、特定の下垂体前葉ホルモン産生細胞を認識することが明らかとなった。さらに、抗下垂体抗体のIgGサブクラスについて解析した結果、同定された抗下垂体抗体は全てIgG4サブクラスではない自己抗体であることが明らかとなった。このことから、IgG4関連疾患において上昇しているIgG4は、自己抗体として病態には関与しないことが示唆された。IgG4関連下垂体炎患者血清血清中に認められた抗下垂体抗体を診断の補助に用いることは、非侵襲的であり、臨床において今後有用となる可能性が示唆された。今後、抗下垂体抗体が認識する標的細胞中の共通の自己抗原を明らかにすることは、新たな診断マーカーの確立および病態の解明につながると期待された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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