血漿由来末梢血無細胞遊離DNA (cfDNA)について、化学療法前後のDNA濃度変化を12例で確認した。1ml血漿中あたりのDNA量が、治療開始前から100ngを超える4症例では、治療開始後濃度はday3頃から低下あるいは著変なかったが、10ng未満の低濃度の7症例では、day2からday4にかけて濃度の上昇を認め、6例で10ngを超えた。治療前および治療直後の検体採取により、低濃度の症例においても遺伝子解析に応用できる検体が得られる可能性が高まると考えられた。 cfDNAの予後予測に向けた臨床応用として、遺伝子変異解析を行った。DLBCL症例46例の血漿由来cfDNAを用い、STAT6のD409置換を伴う変異解析を施行した。初診時検体:26、再発難治時検体:7、形質転換後:7、EBV陽性DLBCL:2、DHL:3を用いた。初発GCB1例、治療抵抗non GCB1例でSTAT6変異を検出した。治療抵抗例では経時的なSTAT6変異割合の増加を確認し、同変異は腫瘍組織由来DNAでも確認された。cfDNAを用いた経時的な解析により、再発や難治例の早期発見に繋がる可能性が示唆された。 ホルマリン固定標本(FFPE)由来DNAを用いて、中枢神経病変を認めたDLBCL症例11例で、CARD11、CD79B、MYD88の変異解析を施行した。初発時浸潤例:3、再発時浸潤例:6、中枢神経原発B細胞リンパ腫(PCNSL):2について解析した。CARD11変異はPCNSLの1例で検出されたが、DNAの質の問題で4例において一部解析困難であった。CD79B ITAMの変異は2例(再発時浸潤例:1、PCNSL:1例)、MYD88 L265P変異は6例(初診時浸潤例:2、再発時浸潤例:3、PCNSL:1)で認められた。 また、髄液由来cfDNAも抽出可能であり、PCRでは、400bps程度のDNA増幅が可能であった。腫瘍組織で検出されたMYD88 L265P変異は髄液由来cfDNAでも確認された。生検困難な中枢神経病変の診断に際し、有用な代替法となる可能性が示唆された。
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