研究実績の概要 |
【背景・目的】これまでに間葉系幹細胞が有する抗炎症作用・免疫抑制能を利用した細胞投与による大動脈瘤治療効果を明らかにしてきた。一方、近年では間葉系幹細胞が分泌する「エクソソーム」にも抗炎症作用や免疫抑制能を有しているとの報告があることから、本研究では、間葉系幹細胞から産生されるエクソソームを利用した、細胞を用いない、新たな大動脈瘤治療法の可能性を探る。 【実験】マウス大腿骨から骨髄を採取し、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を樹立した。80-90%コンフルエントの時点で血清不含培地に変えて48時間培養したのち、培養上清を回収して超遠心法にてエクソソームを分離した。得られたエクソソームは、フローサイトメトリーにて特異的表面抗原の同定、および透過型電子顕微鏡にて形態観察を行った。次に、活性化マクロファージまたは血管平滑筋細胞の培養培地にPKH26でラベルしたエクソソームを添加し、細胞内への取り込みの様子を顕微鏡で観察した。また、定量リアルタイムPCRにて各細胞の遺伝子発現変化について検討した。 【結果】約100nm前後のエクソソームの存在が観察され、特異的表面抗原CD9, CD81陽性が同定された。また、培養培地に添加したエクソソームは、活性化マクロファージおよび血管平滑筋細胞どちらにおいても12時間後で細胞内に取り込まれている様子が確認され、細胞形態に大きな変化は見られなかった。遺伝子発現では、活性化マクロファージにおいて、エクソソーム無添加群に比べてエクソソーム添加群でIL-1beta, TNF-alpha, MMP-2, MMP-9遺伝子発現が有意に低下した。一方、血管平滑筋細胞では、エクソソーム無添加群に比べてエクソソーム添加群でCystatin C, TIMP-2, MMP-2遺伝子発現が有意に上昇した。
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