研究実績の概要 |
【背景】大動脈瘤に対する外科治療は侵襲が大きく、新たな低侵襲治療の開発が望まれる。これまでに骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)が持つ抗炎症作用、組織修復能を利用して大動脈瘤に対するBM-MSC静脈内投与を行い、瘤の縮小効果を証明した。今回我々はBM-MSCからエクソソームを分離・同定しエクソソーム静脈内投与による新たな大動脈瘤治療について検討した。 【方法】24週齢以上、雄のapolipoprotein E 遺伝子欠損マウスに、4週間持注による大動脈瘤誘発後、特異的表面抗原CD9, CD81陽性のマウスBM-MSCエクソソームを経静脈投与した(E群)。対照群には生理食塩水を投与した(S群)。投与1週間後に犠牲死させ、超音波測定装置による継時的瘤径測定、瘤発生率、EVG染色による組織学的評価を行った。 【結果】瘤径は両群ともにATII持注4週間後に有意な大動脈径拡大認めたが、投与1週間後では、S群に比べE群で有意に瘤径縮小を認めた(E群 vs S群 = 1.63 ± 0.11 vs 2.2 ± 0.13, p < 0.05)。瘤発生率はE群 20%, S群 100%とE群で有意に低下した(p < 0.05)。組織学的所見では、S群に比べてE群でエラスチン繊維の変性分解が抑制されている所見が観察された。 【結語】エクソソーム静脈内投与によって大動脈瘤の縮小効果がみられ、大動脈瘤治療の可能性が示唆された。
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