研究実績の概要 |
マウス(BL-6,6週齢)脊髄切片より運動(前角)神経細胞と後角神経細胞を単離し、発現しているmRNAをエクソンアレイおよび次世代シークエンサーを用いて網羅的に比較、検討した結果、様々なFibrobalst growth factor (Fgf)が同定された。その中でもFgf18遺伝子は脊髄前角に有意に発現していた。 さらにE13.5, 15.5, 17.5, P1, P7, P20で出生したマウス(BL-6)の脊髄と筋肉を採取しFgf18mRNAの発現量をQ-PCRを用いて定量した。Fgf18は脊髄成長段階においてE15.5で発現量にピークを向かえ次第に低下していった。一方、筋肉においてはE13.5でピークを向かえ、以降低下していった。Fgf18はE13.5からE15.5において脊髄や筋肉で高い発現をしており器官形成に重要であると考えられた。 そこでFgf18ノックアウトマウスにおける神経軸索や神経筋接合部の観察を行うこととした。Fgf18ノックアウトマウスは呼吸不全により出生直後に致死であるためヘテロマウスを交配させ、胎児で観察することとした。胎生18.5日の胎児を取り出し、横隔膜を観察した。取り出した横隔膜のアセチルコリン受容体をバンガロトキシンにて染色し、神経軸索はペリフェリンを用いて染色した。横隔膜前方において神経軸索はノックアウトマウスで有意に長かった。各神経軸索におけるアセチルコリン受容体数はノックアウトマウスにおいて有意に少なかった。さらに、神経終末においてシナプス小胞をシナプトフィジンで、アセチルコリン受容体をバンガロトキシンにて染色し神経筋接合部を観察した。ワイルドマウスと比較しノックアウトマウスでは神経筋接合部は紡錘状であった。これらを定量すると、ノックアウトマウスではアセチルコリン受容体の面積が有意に小さく、またシナプス小胞が染色された面積も小さかった。
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今後の研究の推進方策 |
さらなるVivoの実験として電子顕微鏡検査による、Fgf18-KOの脊髄運動神経細胞の軸索や神経筋接合部(NMJ)の詳細な形態形成を観察したい。 Fgf18-KOの横隔膜を使用し、NMJの形態変化を詳細に電子顕微鏡観察で明らかとする。横隔膜の切片作製とトルイジンブルー染色により神経軸索の観察し、NMJの位置の推測を行う。その切片を2%酢酸ウラン水溶液及び鉛染色液で染色し、電子顕微鏡を用いて観察する。胎児におけるNMJの見出しは困難であるが、同様な実験で協力いただいた花市電子顕微鏡技術研究所の助言と協力を得る。 Vitroの実験としてFgf18-KOより単離した初代運動神経細胞と筋肉細胞を用い、各細胞におけるFgf18の役割を同定したい。具体的にはFgf18-KOの雄雌を交配させ、胎児採取後すみやかにその胎児の迅速ジェノタイピングを共同研究者と共に行う。初代運動神経細胞は未分化な運動神経細胞が多く含まれる胎生13.5日目の脊髄前角より採取する。ジェノタイピングの結果よりFgf18-KOの運動神経細胞のみを単離・培養する。培養開始2-4日後、抗Tau抗体などを用いて神経軸索を染色する。名古屋大学医学系研究科に常設してあるThermo社製Arrayscanを用いて神経軸索長、分枝数を定量的に評価する。 初代筋肉細胞は未分化な状態である胎生18.5日目の臀部から大腿までの骨格筋から単離し、低血清中で培養し筋管細胞に分化させる。Agrin添加の有無を調節して、標識付きbungarotoxinで特異的にAchR重合の大きさ、局在、形態を観察する。 Fgf18の受容体であるFgf receptorの発現も評価したい。具体的には昨年度E13.5, 15.5, 17.5, P1, P7, P20で出生したマウス(BL-6)の脊髄と筋肉を採取しFgf18mRNAの発現量をQ-PCRを用いて定量したが、これと同様な方法でFgfR1,FgfR2,FgfR3,FgfR4の発現量を定量化し、成長過程におけるFgf18とそのreceptorの関係をみる。
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