【目的】神経筋接合部形成(NMJ)において、当教室では脊髄が高発現している分子に注目した。そこで、脊髄の中で運動神経細胞において特異的に発現する遺伝子産物を大規模に比較・検討した。この結果、Fgf18が同定されたため、NMJに対するFgf18の作用を解析した。 【方法】6週齢C57BL/6Jマウス脊髄切片より運動(前角)神経細胞と後角神経細胞を単離し、発現しているmRNAをエクソンアレイおよび次世代シークエンサーを用いて網羅的に比較、検討した結果、Fgf18遺伝子を同定した。Muskのリン酸化をみるためにHEK細胞にMuskを高発現させFGF18蛋白による反応をみた。さらにNMJが形成されるC57BL/6Jマウス胎生期における脊髄と筋肉細胞からのFgf18発現量を測定した。Fgf18のアセチルコリン受容体に対する役割を、筋肉細胞であるC2C12を用いてアセチルコリン受容体の重合を用いて評価した。またFgf18ノックアウトマウスの胎生18.5日におけるNMJの形態形成を免疫染色(α-bungarotoxin抗体)を用いて解析し、さらに電子顕微鏡にて観察した。 【結果】筋肉細胞において、Fgf18はアセチルコリン受容体の重合を促した。これはインヒビターを入れることで打ち消された。またFgf18はNMJ形成に必須のMuskのリン酸化とアセチルコリン受容体の重合を誘導した。一方、Fgf18ノックアウトマウスではアセチルコリン受容体はwild typeと比較し免疫染色にて有意差をもって小さかった。さらに電子顕微鏡においてNMJの形成にsynaptic vesicleが少ないなどの異常が観察された。 【結論】以上の結果より、Fgf18は脊髄運動神経細胞と筋肉細胞より特異的に分泌され、NMJの形成に正に作用する分子であると考えられた。
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