研究実績の概要 |
本研究はLHRのエピジェネティックな発現制御機構を解明することを目的とした。予備実験にて認めたヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(TSA)とDNA脱メチル化剤(5-AzaC)によるLHRの発現上昇は、LHRプロモーター領域に何らかのエピジェネティックな作用が及んだ結果と考えられ、同プロモーター領域のヒストン修飾とDNAメチル化を解析した。 ヒストン修飾(アセチル化とメチル化)に関しては、HGrC1でのTSA添加による変化をクロマチン免疫沈降(ChIP assay)にて評価した。H3K14ac, H4K16ac, HeK9ac, H4K5ac, H4K12acのアセチル化抗体、H3K9me, H3K4meのメチル化抗体を用いて行った。H3K14ac, H4K16ac, H4K8ac, H3K9acにおいてアセチル化の上昇が見られた。特に、一般的にアセチル化によって遺伝子発現が促進されると報告されているH4K8acでは、4.3%からTSA添加により10.4%(%input)への大幅な上昇が見られた。 DNAメチル化に関しては、HGrC1でのTSA添加による変化を、培養細胞からgenomic DNAを回収し、bisulfite処理を行うことでヒトLHRプロモーター領域の13個のCpG配列におけるメチル化を調べた。HGrC1(49 colony)ではCpG配列の20.3%がメチル化されていた。TSA添加(33 colony)ではメチル化率は21.7%であり、TSA添加による差を認めなかった。 これらのことより、HGrC1においてTSA添加によって見られたLHRの発現上昇は、ヒストン修飾の変化、特にH4K8のアセチル化に由来する可能性が示唆された。
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