本研究はLHRのエピジェネティックな発現制御機構を解明することを目的とした。LHR発現は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(TSA)とDNA脱メチル化剤(5-AzaC)の添加で上昇する。LHRプロモーター領域に何らかのエピジェネティックな作用が及んだ結果と考えられ、同プロモーター領域のヒストン修飾とDNAメチル化を解析した。ヒト非黄体化不死化顆粒膜細胞株HGrC1と、体外受精の採卵時に得られる黄体化顆粒膜細胞(primary)を用いた。 ヒストン修飾は、クロマチン免疫沈降(ChIP assay)にて8種類の修飾を評価した。アセチル化によって遺伝子発現の促進が報告されているH4K8とH3K9では、HGrC1にTSAを添加することで、各々%input が4.3%から10.4% へ、0.5%から0.8%へ上昇を認めた。同じくprimaryでは各々64.9%と39.3%と更に高値だった。 DNAメチル化は、bisulfite処理を行いヒトLHRプロモーター領域の13個のCpG配列について調べた。HGrC1では20.3%、5-AzaC添加により16.2% へ低下した。Primaryではメチル化率は2.2%。特に2、4、5、9番目のCpGメチル化がLHR発現に関与していることが推測された。これらの配列に結合する転写因子Sp1、RXRa、E2F1につき、LHRプロモーター領域への結合をChIP assayにて評価したところ、HGrC1ではTSAと5-AzaC添加により結合率が各々2.6倍、1.6倍、1.8倍上昇した。 LHRプロモーター領域がエピジェネティックな修飾を受け、転写因子の結合が変わることでLHR発現が制御されている可能性が示唆された。特に、LHRプロモーター領域のH4K8とH3K9のヒストンアセチル化と2、4、5、9番目のCpG配列のメチル化が関与している可能性が示唆された。
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