研究課題/領域番号 |
26893123
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩川 雅広 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (50737880)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | IgG4 / 病原性 / IgG4関連疾患 / 自己免疫性膵炎 |
研究実績の概要 |
IgG4関連疾患は我が国において提唱された、血清IgG4上昇とIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする全身性の自己免疫疾患である。これまでこの疾患のHallmarkであるIgG4がどういう役割(病原性)を持っているのか明らかになっていなかった。申請者らは、平成26年度に下記の実験をしてIgG4の病原性を世界で初めて明らかにした。 ①患者IgGの新生児マウスへの皮下注射による病原性の評価 本実験系は尋常性天疱瘡の病態解明において確立されたマウスモデルを応用した。IgG4関連疾患患者10名および年齢・性別をマッチさせたコントロール10名(健常人5名、膵癌患者5名)より抽出した。申請者はこれまでに、患者IgGのマウスへの投与により同患者の罹患臓器と同一のマウス組織に病変ができることを見出し、用量依存性、時間依存性があることも確認した。また、各臓器においてヒトIgG、および IgG4 に対する免疫染色を行い、抗体結合部位が細胞外マトリックスにあることを確認した。 ②. 患者IgGの各サブクラスにおける病原性の評価 IgG1、IgG2、IgG3、および IgG4 のサブクラスに分画し、各分画の病原性について、①において確立したマウス実験系を用いて評価した。申請者らはIgG1とIgG4に病原性があること、更に、IgG4はIgG1に対し抑制的に働くことも確認し、①と同様に抗体結合部位が細胞外マトリックスにあることを確認した。 ③. ヒトAIP組織との相関の評価。申請者らは予備実験にて、マウス・ヒトの両者において、IgG・IgG4とも細胞外マトリックスに沈着があることを確認した。 上記①~③の結果を論文に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の患者IgGが反応する抗原を現在下記の方法で検索している。 (1)二次元電気泳動による同定 マウス膵抽出物を二次元電気泳動によりゲル上に展開し、患者あるいはコントロール血清を一次抗体として用いたWestern blotting法を行う。申請者はこれまでの予備実験において、患者血清を用いた場合のみに特異的に認められるバンドを見出している。同バンドを切り出し、トリプシンで消化のうえ,京都大学大学院医学研究科 医学研究支援センターにおいて質量分析を行い、アミノ酸配列を同定,さらにはBLASTで照合し抗原を同定する。 (2)免疫沈降法を使用した同定 上記(1)の方法では、マウスのサンプル調整時の熱処理により真の抗原の抗原性が低下あるいは消失してしまう可能性がある。これを避けるため、患者あるいはコントロールIgGをカラムに結合させ、免疫沈降法によりマウス膵組織から蛋白を抽出する。これを電気泳動することにより患者IgGに特異的なバンドを見出し、切り出したうえで質量分析を行う。 (1)(2)の方法で抗原の候補がいくつかでてきたがELISAでvalidationができなかった。おそらく患者IgGの中にたくさんの他に結合する抗体が含まれているため、また抗原がサンプル調整の段階で抗原性が消失している可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在、患者ヒトIgG4陽性形質細胞からEBウイルスを用いて不死化させ、モノクローナル抗体を産生する細胞を作成し、IgGをクローニング後、モノクローナル抗体を作るプラスミドを作成し、パッケージ細胞にトランスフェクション後、モノクローナル抗体を単離し、上記の(1)(2)の方法や、ペプチドライブラリーなどでのスクリーニングなどを通して、非特異的な反応を抑えて、真の抗原の同定を試みている。また、細胞外マトリックスに抗原があることを考えているため、膵臓で発現しているタンパクのrecombinant proteinを購入、または作成し、ELISAでvalidationできるか、試みている。 抗原が特定できた場合、抗原に反応する抗体を定量的に測定できるELISA法をコマーシャルベースで開発し、診断や治療反応性、再発などとの関連について検討し、臨床応用の可能性を探りたいと考えている。申請者らは、難治性疾患克服研究事業(厚生労働科学研究費補助金)「IgG4関連疾患に関する調査研究」班(研究代表者:京都大学 千葉 勉)においてIgG4関連疾患のGenome Wide Association Study (GWAS)をおこなっており、約900人分のリンパ球DNA、血清と臨床データを保持している。また、コントロールには、京都大学医学部附属病院でバイオバンクに登録された膵癌、胆道癌患者の血清を多数保持しており、どちらも倫理委員会において、本研究に使用する承認をうけている。これらの血清を用いて、このELISA法による自己抗原定量のIgG4関連疾患診断に対する感度ならびに特異度と、血清IgG4値の感度ならびに特異度との比較を行いvalidationする。
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