研究実績の概要 |
出生後に心筋細胞で発現が低下する遺伝子群のうち、培養細胞レベルで細胞増殖を促進する遺伝子を複数同定した。発生過程において心筋細胞の増殖は出生後早期に失われることから、同定した遺伝子群は成体での心筋細胞増殖抑制に関与している可能性があり、これらの因子の増殖制御における分子機序を検討していくことで、成体で心筋細胞が増殖しなくなる分子機構を明らかにできると考えられる。心疾患において心筋細胞は増殖しないため、その分子基盤の解明や増殖誘導の可能性を探ることにつながる。同定した遺伝子は、マウスの出生後早期に心臓で発現の低下が見られ、(1)免疫染色において心筋細胞特異的な発現変化を示し、ラット心臓筋芽細胞ライン(H9C2)の(2)knockdownで増殖が有意に低下し、(3)overexpressionで増殖が有意に増加した。同定した遺伝子の一つは、細胞骨格に結合し、核移行を示す蛋白であり、関連蛋白の今までの解析により心筋細胞増殖への関与の可能性が示唆される。心筋細胞で出生後これらの遺伝子発現が低下することにより、心筋細胞の増殖能喪失が起こっている可能性がある。今後これらの遺伝子の増殖シグナルや細胞周期における役割、結合蛋白、下流遺伝子の解析等を含めて、心筋細胞やES細胞由来分化心筋細胞を用いた系でin vitro, in vivoでの解析を進め、心筋細胞増殖制御における分子学的な意義を検討する。
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