認知症をもつ高齢者は、記憶障害、見当識障害および言語的流量性の障害により、自ら主体的に活動を選び、その意義を表現することが困難になることが多い。多くの高齢者施設等でレクリエーションや体操などの活動がそれらの対象者に提供されているが、これらのサービスは漫然とマンネリ化して行われることも多く、その効果の指標がなく、適正に評価されていないことが問題を招く原因として考えている。そのため、本研究は活動による本人い取っての意義、つまり活動参加による本人のニーズが満たされているかという活動の質(QOA)の評価項目の作成を目的に行った。 当該年度は、昨年度得られた評価項目を元にその内容妥当性を検証することを1つの目的に研究を実施した。認知症をもつ対象者を専門とする作業療法士に対して郵送によるデルファイ法を用いて、項目への同意の程度を求めた。結果として、88名の作業療法士から回答が得られ、先行研究から得られた19項目に対して、全て同意が得られた。この結果から、評価法の内容妥当性が得られたと判断した。しかし、調査の自由記載から項目の定義や内容に対して見直す必要があるコメントも得られたため、それらに関しては一部修正を実施した。 もう一つの調査として、発達領域でのQOA評価法の適応を図る目的で、重症心身障害児を専門とする作業療法士7名に対して、インタビュー調査を実施した。インタビューの内容は重症心身障害児に活動を提供した際にどのような言動を観察してその効果を判断しているかに関してであった。インタビュー内容は逐語録化し、質的にデータの分析を行った。結果としては、「活動の参加や遂行を示すサイン」「活動への意志や要求を示すサイン」「ポジティブな感情を示すサイン」という大項目が得られた。この結果は認知症高齢者の結果と類似する点があり、QOA評価法の発達領域での適応の可能性が示唆された。
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