死因診断のため、主に大阪府監察医事務所にて施行された検案症例から検体採取を行いPCR法にてウィルスの検出を行った。検体として、当初は諸臓器の凍結組織を用いる予定であったが、ヒト組織で、ウィルス感染巣でない組織から、微量に存在するウィルス核酸を検出することは、技術的に非常に困難であることが判明した。そのため、採取部位を感染があれば増殖巣となりうる咽頭とし、ヒト由来細胞をあまり含まないぬぐい液に変更した。これにより、微量のウィルス核酸を定量PCRする必要がなくなったため、PCR法をconventional RT-PCRに変更した。 また、検体採取に関して、当施設の倫理委員会では、当初、遺族からの同意書取得は可能な限り行うべきであるとの判断であったため、主に大阪府監察事務所内で、遺族からの同意書取得の手続きについて調整を行ったが、最終的に、遺族説明の実施が困難であるとの結論となった。このため委員会での再審議が必要となり、結果として倫理委員会からの承認を得るのが平成28年3月中旬となり、検体採取期間が大幅に短縮することとなったため、十分な検体数を得ることが困難となった。 検体採取は平成28年3月中旬から3月31日にかけて行い、合計13例の検案症例から咽頭ぬぐい液を採取した。これに対しウィルスRNAの抽出精製をこない、A型およびB型のインフルエンザウィルスに対し、conventional RT-PCRを施行したところ、1例からB型インフルエンザウィルスが検出された。 流行期が終息しかけた時期の検体採取であったが、13例のうち1例から潜伏感染ウィルスが検出された。このことから、通年での検体採取でもある程度の潜伏ウィルスを検出しうる可能性が示唆され、今後、通年での検体採取及びウィルスの検出試験を継続する予定としている。
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