研究実績の概要 |
糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などの眼疾患や悪性腫瘍は中途失明や生命に関わる重篤な疾患であり、その発症および進行には虚血および病的血管新生が密接に関連することが知られている。本研究では、既存血管に存在して血管新生に中心的な役割を果たす特殊な血管内皮細胞を同定し、血管新生との関連を解明することにより血管新生を制御する新規治療法の開発を目指すことを目的としている。我々は、FACSおよび蛍光標識モノクローナル抗体を用いた精度の高い血管内皮細胞単離法を確立し、さらにDNA結合性色素Hoechstを用いたSide population (SP)法を行い、血管新生の際に中心的な役割を果たす潜在的増殖活性の高い血管内皮細胞として血管内皮SP細胞を同定してきた(EMBO J 2012, IOVS 2013)。血管内皮SP細胞は既存血管中の血管内皮細胞の約1~3%で存在し、低酸素刺激でその割合および増殖活性が増加し機能的血管を構築することがわかった。 平成26年度の研究ではDNAマイクロアレイを用いてマウス生体より回収した血管内皮SP細胞および血管内皮MP細胞(SP細胞以外の大部分)の遺伝子発現プロファイルを解析し、血管内皮SP細胞で最も特異的に発現し、潜在的増殖能力に相関する遺伝子Xを同定した。 平成27年度の研究では、血管内皮SP細胞が生体内で実際に存在し、血管新生に貢献するかを検証するため、遺伝子Xに変異型Estrogen受容体融合蛋白(CreERT2)を発現したBAC(大腸菌人工染色体)トランスジェニックマウスを作製し解析した。
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