接着界面における象牙質コラーゲンの劣化抑制を目的に、既に強固な架橋形成能を有することが知られているグルタールアルデヒド(GA)および、眼科領域での応用がなされているリボフラビン(RI)に着目した。これまでのCross-Linkerの象牙質への応用についての研究は、エッチ&リンスシステムに対するもののみであり、セルフエッチングシステムでの応用がなされた報告はなく、また現在の臨床においてはこれらが主流であることから、Cross-Linkerとセルフエッチングシステムの併用における象牙質コラーゲンの劣化への効果について検討を行った。 今年度は、それぞれのCross-Linkerの処理時間の違いによる象牙質接着強さ低下抑制および架橋による分解抵抗性についての評価を行ってきた。 まず、接着強さ低下抑制効果については、健全象牙質の歯冠部を切除し平滑面を露出させ、10%GAおよび0.1%RI、コントロールとして蒸留水にそれぞれ1分または5分浸漬させた後、セルフエッチングシステムのレジンを処理し、コンポジットレジンを築盛したものを試験試料とし、微小引張接着試験を行った。24時間後のデータは、RI1分処理で最も高い接着強さを示した。現在長期的データ試験として6ヶ月および1年試料を水中浸漬中である。また、透過型電子顕微鏡にて、界面の状態を比較検討中である。 さらに、接着試験で最も効果の得られたRivoflavinについて、MMPによるコラーゲン分解に対する効果を免疫染色法にて検討を試みた。0.1%Rivoflavinを1分、5分、および紫外線照射を加えて1分および5分処理した試料に対して、MMP-2および9を作用させ、anti-collagen抗体を用いて検討を行ったが、顕著な結果は得られていない。作用させるMMPの濃度および作用時間についてさらなる詳細な条件の検討が必要であると考える。
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