研究実績の概要 |
本研究課題では、間葉系幹細胞由来のTrophic因子が、歯周組織再生過程に及ぼす影響について検討を行っている。平成27年度の研究成果について以下に報告する。 前年度の結果から、脂肪組織由来間葉系幹細胞(以下、ADSC)の培養上清を培養ヒト歯根膜細胞(以下、HPDL)の石灰化誘導時に添加することで、HPDLの硬組織形成細胞への分化誘導を促進することが明らかになり、また、ADSCがIGFBP6を分泌していることが明らかとなった。 これらの結果を踏まえ、ADSC培養上清中のIGFBP6がHPDLの硬組織形成細胞への分化に影響を与えるか否かについて検討を行った。まず、ADSCにリポトランスフェクション法により、IGFBP6 siRNAの導入を行い、培養上清を回収し、これをBP6 si-CMとした。そして、HPDLの石灰化誘導時にBP6 si-CMを添加し、経時的な石灰化関連遺伝子の発現とアルカリフォスファターゼ(ALPase)活性および石灰化ノジュール形成に及ぼす影響について解析を行った。その結果、BP6 si-CM群は、対照群と比較して、Runx2, ALP, Col1aの有意な発現低下を認め、さらに、ALPase活性の有意な発現低下も認めた。また、アリザリン染色の結果より、BP6 si-CM群において、石灰化ノジュール形成の抑制を認めた。 次に、リコンビナントIGFBP6がHPDLの硬組織形成細胞への分化に及ぼす影響について検討を加えたところ、リコンビナントIGFBP6添加群は、対照群と比較して、Runx2, ALP, Col1aの有意な発現上昇を認めた。 以上の結果より、ADSC培養上清によるHPDLの硬組織形成細胞への分化促進作用に、IGFBP6が関与していることが明らかとなった。
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