研究の主目的である自己免疫のみを特異的に抑制する治療法を確立するため、1型糖尿病モデルマウスを用いて、抗CD20抗体に引き続き、自己抗原(GAD65)を投与することでGAD65に対する免疫反応のみを特異的に抑制し、かつ長期的寛解が得られるかどうかを検討した。抗CD20抗体+GAD65の併用療法をうけたマウスでは長期的な寛解が得られたが、抗CD20抗体の単独療法をうけたマウスでは短期的な寛解が得られた後に1型糖尿病の再発を認めた。GAD65のみを投与したマウスと無治療のマウスの両群において、1型糖尿病の発症率に差を認めなかった。以上より、1型糖尿病の長期的な寛解には抗CD20抗体とGAD65の併用が必要と考えられた。 本実験を繰り返し、1回目と同様の結果を得られた為、併用療法と単独療法との2群間のマウスの脾臓細胞の機能を比較検討した。その結果、GAD65特異的な免疫反応(増殖能やIFN-γ産生能)は、併用療法群では単独療法群と比較して有意に低下していた。一方で、自己抗原以外の非特異的な抗原(OVAペプチドを使用)に対する免疫反応は2群間で差を認めなかった。以上のことから、併用療法群ではGAD65(自己抗原)特異的な免疫反応が選択的に抑制されていると考えられた。 次に、制御性T細胞を選択的に脾臓細胞から分離した場合と分離しなかった場合とで自己抗原特異的、あるいは非特異的な抗原に対する免疫反応に与える影響を比較したところ、併用療法群では、単独療法群と比較して、自己抗原特異的な免疫反応は制御性T細胞の分離操作(非存在下)により著しく亢進したが、抗原非特異的な免疫反応は、制御性T細胞の分離操作前後において、両群間で差を認めなかったことから、抗CD20抗体+GAD65併用療法により自己抗原特異的な制御性T細胞が誘導されていると考えられた。
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