研究課題/領域番号 |
26893151
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
由留部 崇 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (10514648)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 椎間板変性 / オートファジー / 老化 / 脊椎 / 整形外科 |
研究実績の概要 |
①オートファジーの誘導・阻害が椎間板へ及ぼす影響を明らかにする研究 ピッツバーグ大学との共同研究で、ウサギ椎間板細胞を培養し、IL-1βによる炎症刺激下にオートファジー誘導剤ラパマイシンまたは阻害剤3-MAを加え、反応を観察した。IL-1βによりアポトーシスとセネッセンスが増大したが、ラパマイシン群で両者は抑制され、3-MA群ではさらに誘導されていた。また、IL-1βにより基質分解酵素であるMMP-3、MMP-13の発現は増大し、細胞外基質であるアグリカンの分解が促進していた。ラパマイシン添加群ではMMP-3、MMP-13の発現が抑制され、MMP由来アグリカン分解産物も減少した。一方で3-MA添加群ではMMP-3、MMP-13の発現が増大し、アグリカン分解産物も増加していた。当研究室でもヒト椎間板不死化細胞株を用いて同様の検討を行うとともに、オートファジー必須蛋白Atg5に対しRNA干渉を行い、発現を抑制した。Atg5抑制により細胞死とアグリカン分解物の増大を確認した。以上より、ラパマイシンによるオートファジーの活性化が椎間板保護作用を来す可能性が示唆された。 ②椎間板でオートファジーを誘導するための最適な方法・シグナルを明らかにする研究 ラパマイシンはmTORシグナル経路でmTORC1を抑制する。mTOR経路の最適な作用点を探るべく、mTORC1上流に存在するAktの阻害剤、mTORC1・mTORC2二重阻害剤の作用を検討した。これら阻害剤はより強力にオートファジーを誘導する一方、細胞死や基質分解を強く誘導する結果となり、mTOR経路の広範な阻害は必ずしも椎間板保護に作用しない結果であった。以上より、ラパマイシンのようにmTORC1のみの阻害が椎間板保護につながる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度中に行う予定であった細胞実験は、まだ一部で継続が必要なものの、おおむねは終えることが出来た。Atg5のRNA干渉効果を検討する実験については更なる検討が必要であり、今年度も継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は当初の研究計画の通り、細胞実験の結果を基に動物実験を主体とした検討を行う予定である。ラットを用いた椎間板変性モデルを作成し、椎間板内にラパマイシンを投与することで変性の進行が画像診断学的、組織学的、細胞生物学的に抑制されるかどうかなど、ラパマイシンの治療効果を検討する予定である。また、椎間板組織のAtg5に対する生体内RNA干渉を行うことでオートファジーを抑制した群を作成し、物理的刺激や加齢により椎間板変性がより重度に進行するかどうかを観察する予定である。さらに、髄核と線維輪からなる椎間板組織および類似の性格を示す関節軟骨組織のいずれの組織でオートファジー活性が最も高いのかを明らかにする実験を行う予定である。
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