ATPは分泌小胞に濃縮、開口放出され、プリン受容体に結合することで味覚・疼痛等の感覚受容や血糖調節等の代謝調節といった多彩な生理作用を示す(プリン作動性化学伝達)。小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)は小胞内へのATP輸送を担い、プリン作動性化学伝達に必須である。本研究では、モデル生物であるショウジョウバエに着目し、プリン作動性化学伝達におけるVNUTの生理的意義を解明することを目的とした。 VNUTノックアウトショウジョウバエの表現型解析を実施し、いくつかの表現型を見いだした。また、VNUTの生理的役割の新たな研究ツールの開発のために、VNUT特異的阻害剤を探索した。その結果、新しいVNUT特異的阻害剤を同定した。この化合物は、他の小胞型神経伝達物質トランスポーターと比べて、約1000倍もの選択性を持ち、IC50は15 nMと低濃度でVNUTを阻害した。また、VNUTの活性制御スイッチであるCl-と競合し、アロステリックにATP輸送を阻害することを明らかにした。現在、この化合物とVNUTノックアウト生物を用いて、VNUTの生理的役割を調べている。
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