研究実績の概要 |
本研究は、歯質接着材料でよく用いられている機能性モノマー10-MDPの純度が、安定性、ハイドロキシアパタイトとの化学反応性を解析し、さらに接着強さ測定とナノレベルでの接着界面の観察を行うことにより、モノマーの合成方法、純度が接着強さ、耐久性に影響を及ぼすメカニズムを解明するものである。 入手可能な3社の10-MDP(10-MDP_KN:クラレノリタケデンタル、10-MDP_PCM:PCM,10-MDP_DMI:Designer Molecule Inc)を用い、液体NMRで分析を行った。その結果、10-MDP_PCM,10-MDP_DMIでは10-MDPのダイマーの存在が検出されたが10-MDP_KNでは検出されなかった。また、10-MDP_PCM,10-MDP_DMIでは、不純物の存在も確認された。 また、15w%10-MDP溶液を牛歯象牙質に塗布した時のX線回折測定では、低角側に観察される10-MDP_Ca塩の層状構造に由来するピーク強度が、10-MDP_KNでは非常に強いのに対し、10-MDP_PCM、10-MDP_DMIではそれほど強くなかった。また、10-MDP_DMIでは歯質と反応しなくても層状構造物の存在が確認され、EDS分析からそれがナトリウム塩であることが示唆された。 以上から、3種の10-MDPは純度が異なり、それにより、接着強さ、耐久性に大きく影響を及ぼしていることが示唆された。本研究成果は、2014年12月に神戸で行われた、接着歯学会で発表を行った。現在、Journal of Dental Researchに投稿中である。
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