研究実績の概要 |
初期化遺伝子を体細胞に発現させるためにウイルスベクターを導入すると、作成したiPS細胞のゲノムに変異が生じることが問題になっている。そこで、初期化遺伝子を発現させるベクターとして、導入細胞のゲノムに挿入されないエピソーマルベクターを選択した。エピソーマルベクターによるマウスiPS細胞株の樹立はこれまでに報告がないため、効率良く樹立するための条件検討を行った。異なった発生段階にあるマウス胎仔 (胎生12日~14日齢)から細胞分離を行って比較検討し、胎生14.5日胚から生存率が高く増殖性を維持したMEFを分離する最適条件を確定した。次に、ScxGFPマウスの由来のMEFにOCT3/4, SOX2, KLF-4, c-MYC, LIN28, NANOG, EBNA1の遺伝子とp53に対するshRNAが挿入された4種類のエピソーマルベクターをエレクトロポレーションにより導入した。継代を行わず、15%の血清添加ES細胞用培地中で4週間培養を行った結果、iPS細胞様の形態を示すコロニーが複数得られた。また、TnmdCreノックインマウスとレポーターマウスを用いたレポーター発現解析の結果、Tnmdの発現領域でTomatoを検出するには、ゲノムに挿入されるトランスジーンが1コピーでは不十分であることが判明した。従って、TnmdTomatoマウスの作成には、Bacterial artificial chromosome (BAC)でなくTnmdの発現制御領域を含むトランスジーンを構築する必要がある。現在、Tnmdの遺伝子発現パターンを反映するTnmdゲノム領域の範囲の検討を行っている。2015年度の4月より、若手研究(B)に本研究の内容を含む課題、「ゲノム編集技術を用いた歯根及び頭蓋の疾患モデルの作成と解析」が採択され、引き続き研究を継続している。
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