研究課題/領域番号 |
26893166
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂上 泰士 広島大学, 大学病院, 歯科診療医 (00735160)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 口腔癌 / インテグリン / ユビキチンリガーゼ |
研究実績の概要 |
本研究は,ユビキチンリガーゼHDM2を標的とした口腔癌に対する分子標的治療薬の可能性を検討することを目的としている.本年度は,HDM2とインテグリンβ8の結合について解析し,インテグリンβ8がHDM2の基質になり得るかを検討した.まず,インテグリンβ8とHDM2の複合体形成について共免疫沈降法により検討した.プロテアソーム阻害剤MG132にて処理した口腔扁平上皮癌細胞株SCCKNの細胞溶解液を,抗インテグリンβ8抗体または抗HDM2抗体で免疫沈降した標品に対し,各種抗体を用いてWestern Blot法を行った.抗インテグリンβ8抗体または抗HDM2抗体で免疫沈降した標品中に,それぞれHDM2とインテグリンβ8が検出されたことから,インテグリンβ8とHDM2が複合体を形成していた.さらにmammalian two-hybrid法によりインテグリンβ8とHDM2の結合について解析した.作製したHDM2-pMとβ8-pVP16を,分泌型アルカリホスファターゼ遺伝子のReporter Vector であるpG5SEAPとともに扁平上皮癌細胞に導入し,培養上清中のアルカリホスファターゼ活性を測定した.HDM2-pMとβ8-pVP16を導入した細胞は,コントロールに比べ,アルカリホスファターゼ活性が亢進したことから,インテグリンβ8とHDM2が結合していることが示された.そこで,HDM2はインテグリンβ8と結合することで,そのユビキチン化を制御することから,インテグリンβ8におけるHDM2の結合部位をmammalian two-hybrid法にて検索するため,inverse PCR法を用いてインテグリンβ8の特定の領域を欠失させた数種のdeletion mutantを作製した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共免疫沈降法およびmammalian two-hybrid法によってインテグリンβ8とHDM2が複合体を形成していることが明らかになった.本研究遂行上,この作用の本質を見極めることが必要であるので,研究方式を見直し,インテグリンβ8のdeletion mutantを用いたmammalian two-hybrid法により,インテグリンβ8におけるHDM2の結合部位を検索する必要性が生じた.各種deletion mutantの作製に複数回の実験を要したため,当初の計画に遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
インテグリンβ8の特定の領域を欠失させたdeletion mutantを用いたmammalian two-hybrid法を行い,HDM2との結合変化を解析することで,インテグリンβ8における,HDM2の結合部位(蛋白質分解調節領域degron)を検索する.扁平上皮癌細胞をHDM2阻害剤で処理し,インテグリンβ8発現の変化を検討する.さらに,HDM2遺伝子導入によってHDM2を高発現させた口腔扁平上皮癌細胞の遊走能の変化をBoyden chamberの変法にて解析することで,HDM2が口腔癌の浸潤・転移に与える影響について検討する.
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