Wntシグナル経路は大腸癌の発生・進展に関与する重要なシグナルである。近年、本シグナルに関連した新規分子LGR5又はTROYと大腸癌の関連性を示した報告がなされているが、その詳細は明らかとなっていない。本研究では、大腸癌細胞株を用いたin vitro実験を行い、また、大腸癌組織及び非腫瘍部から抽出したRNAを用い、LGR5とTROYが予後予測マーカーとなりえるか検討した。7つの大腸癌細胞株からLGR5とTROYの発現状態をmRNAレベルで確認し、2つの遺伝子が共に低発現であったRKO細胞を用いて、LGR5とTROYを単独または同時過剰発現させたところ、これら2つの遺伝子は独立して発現していることが確認できた。また、臨床検体の結果ではLGR5とTROYは非腫瘍部に比べ腫瘍部で有意に高発現していることが確認でき、LGR5とTROYの同時高発現群はそれ以外の群に比べ、有意に術後の再発期間が短かった。更にはCox比例ハザード解析を行ったところ、TROYの高発現は術後の生存期間や再発期間と有意に関連していることが確認できた。LGR5とTROYを組合せは、大腸癌患者の術後の再発率の予測に有用なマーカーの可能性が示唆され、また、TROY単独では大腸癌患者の術後の生存期間及び再発期間の予測に有用なマーカーの可能性が示唆された。
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