白血球中の大多数を占め病原微生物の排除に重要な役割を担っている好中球に関し、本研究開始時点でその分化に関わるサイトカインや転写因子についてマウスを主として知見が集積しつつある一方で、好中球特異的前駆細胞(NeuP)は同定されていなかった。そこで1) マウス及びヒト造血前駆細胞分画中にNeuPをプロスペクティブに純化する技術の確立、2) 好中球への分化経路・系統決定メカニズムの解明、以上の2点を目的とし研究を開始した。 M-CSFRとVCAM-1の発現パターンによりマウス顆粒球・単球系前駆細胞 (granulocyte/macrophage progenitor;GMP)は3つの亜分画に分離することが可能であった。液体培養・コロニーアッセイを用いたvitroでの解析で、M-CSFR陰性VCAM-1陰性GMPおよびM-CSFR陽性VCAM-1陰性GMPが顆粒球系細胞にも単球系細胞にも分化できるのに対し、M-CSFR陰性VCAM-1陽性GMPは好中球に限定的な分化能を示した。またActin-GFPマウスより純化したGMP亜分画を野生型マウスに移植する実験系においても、M-CSFR陰性VCAM-1陽性GMPの好中球限定的な分化能が確認された。これらの結果よりマウスのNeuPをGMP中のM-CSFR陰性VCAM-1陽性分画と定義することが初めて可能となった。我々が新規に同定し得たマウスNeuPという純化前駆細胞集団を解析することで得られる、好中球の分化・系統決定機構に関する情報は非常に信頼度が高いものであると考える。
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