研究課題
本研究の主目的は、てんかん発射が発達障害を含めた認知障害に関与する生理学的メカニズムを、脳波と近赤外線スペクトロスコピーの同時測定を用いて検証するものである。平成26年度には、下記のように、てんかん発射がどのような様態で脳血流変化に影響を及ぼしているのかを明らかにすることができた。1.患者プロフィールの収集:九州大学病院小児科を受診した小児てんかん患者を対象として、年齢、性別、知能検査などのプロフィールを収集した。2.脳波・近赤外線スペクトロスコピー同時計測:21チャネルで記録した脳波の電位データ、6チャネルで記録したの血流変化データを同期させることに成功した。3.脳波のてんかん発射・近赤外線スペクトロスコピーの脳血流変化の解析:脳波の電位データと近赤外線スペクトロスコピーの脳血流変化データを統合させた。てんかん発射が出現前後の3種類(酸素化・脱酸素化・総)のヘモグロビンにおける血流変化データを取り出し、てんかん発射をトリガーとして加算平均し、てんかん発射に伴う血流変化を算出し、3種類のヘモグロビンにおける時間的な血流パターンを同定した。すなわちてんかん発射に伴って、酸素化・総ヘモグロビンが増加し、脱酸素化ヘモグロビンが減少することを明らかにした。てんかん発射により3種類のヘモグロビンが異なる動態を示したことは、てんかん発射が脳血流に変化をもたらし、酸素代謝ひいては脳代謝に影響しうることを表している。このことは、てんかんと認知障害の関係を検討する上で非常に重要な所見と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
患者プロフィールの収集、脳波・近赤外線スペクトロスコピー同時計測・解析まで行うことができ、おおむね順調に進展していると考えられた。
これまでに引き続き、患者登録をすすめ脳波・近赤外線スペクトロスコピー同時計測を行うとともに、その解析を進めていく。さらに知能検査や発達障害を評価する検査との関連をも検証する予定である。
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Clinical EEG and neuroscience
巻: Epub ページ: Epub
10.1177/1550059415579767
Psychiatry Research: Neuroimaging
巻: 223 ページ: 37-42
10.1016/j.pscychresns.2014.04.012