HMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチンは、高脂血症に対する効果以外に、メバロン酸経路の下流代謝経路であるファルネシル化の抑制作用を有する報告がある。ファルネシル化の生体内における様々な役割は明らかにされてる一方、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬は抗癌剤として臨床試験を試みられており、またマウス敗血症モデルで保護作用を有することが報告されている。本研究では、炎症反応が肝臓に限局して生じる急性肝不全・劇症肝炎に対してファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬の肝保護作用、作用メカニズムを生体および分子レベルで解明することを目標とし、将来臨床応用や適応拡大を目指す。現在①GalN/LPS誘発性急性肝不全マウスの生存率がFTIs投与によって改善する。②肝組織、肝細胞においてGalN/LPS誘発caspase 3活性をFTIsが抑制する。③肝臓切片においてFTIsはGalN/LPS誘発ファルネシル蛋白増加を抑制する。のことを解明した。しかしながら今だにFTIが作用する直接の蛋白などターゲットを絞れていない。しかしながら急性肝不全モデルに対して治療効果を有する可能性を見いだせたのは実際の臨床医学に則し意義のあるものとなっている。しかしながら本研究で急性肝不全の病態生理におけるファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬及びスタチンの関与を明らかにすることができれば、ファルネシル化と肝臓の炎症、あるいは肝保護効果の関係を追求することができる。スタチンで同様のことが解明できればその使用範囲を広げることができる。今後も検討を続けていく。
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