リボソームは巨大な細胞内小器官であるため、超遠心法によってすべての生物から分画することが可能である。そこで、乳酸菌の他にも大腸菌や枯草菌、酵母、ヒト細胞などからリボソームを分離し、細胞塊形成活性を観察した。その結果、すべてのリボソームは細胞塊形成を誘導する活性を持っていた。さらに、遺伝子組換え体から免疫学的に分離したリボソーム、購入したリボソームを用いても同じ結果が得られた。次に細胞塊を脂肪、骨、軟骨細胞に分化誘導培養を行った結果、細胞分化を生化学染色および抗体染色によって確認した。さらに、神経、筋肉細胞への誘導も行い、神経や筋肉に特徴的な形態の変化と抗体染色による染色を確認できたことから、細胞塊は多分化能を有していることが確認できた。 細胞塊の初期化レベルを確認するため、細胞初期化マーカーであるNANOG、OCT4などの発現解析(qPCRおよび免疫染色)を行った。iPS細胞との発現を比較すると弱い発現であったが、発現誘導されていることが確認できた。マイクロアレイによる網羅的発現解析を行った結果、iPS細胞とも大きく発現プロファイルが異なっているが、上皮間葉転換に関係する遺伝子の発現も確認できた。そこで上皮間葉転換に関する免疫染色解析を行った結果、SNAILなどのマーカーの発現が確認された。以上の結果から、リボソームによって誘導した多能性細胞は間葉系幹細胞に近い性質をもった新しいタイプの幹細胞であることが判明した。
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