研究課題
本研究は、腎集合尿細管間在細胞における、酸塩基平衡関連遺伝子の発現調節機構を解明することが目的である。平成26年度は当初の計画通り、細胞株(IN-IC細胞)における、酸またはアルドステロン刺激により誘導される遺伝子群の網羅的解析を進めた。酸塩基平衡関連トランスポーターの発現が確認されているIN-IC細胞中性培養液(pH 7.4)、酸性培養液(pH 7.0)またはアルドステロン(10-8 M)添加中性培養液中で24時間培養後細胞よりトータル RNAを抽出した。抽出後RT-PCRによりcDNAを作製し、アルドステロン、酸により刺激をされることが予想されるいくつかの遺伝子の発現をReal time PCR法により確認したところ、アルドステロン刺激によりserum and glucocorticoid- regulated kinase 1やendothelin 1などが増加していることを確認した。また酸刺激においてはMetalloproteinase inhibitor 3やEarly growth response protein 1などの発現の増加を確認した。またこれらの遺伝子発現をタイムコースで検討し、遺伝子ごとに時間依存的な発現の差異があることを見出した。in vivoにおいては、酸負荷を行うとアルドステロンの分泌も促進されるため、誘導される遺伝子発現がどちらの刺激によるものか明確にすることが困難である。今回の実験により、酸とアルドステロンはそれぞれ独立して特異的遺伝子発現を調節することが明らかとなった。その後酸刺激、アルドステロン刺激の効果を網羅的に検討するため、CAGE法を用いたTranscription Start Site-Sequencingを行った。現在シークエンシングを終え、結果を解析中である。現在のところ、酸刺激により280ほどの遺伝子の転写活性が促進されることを確認し、詳細な解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
pH、アルドステロン濃度など、実験条件決定のための予備実験にやや時間を要したが、おおむね計画通り進展している。
当初の計画通り、網羅的解析を進める。Gene Ontology(GO)解析によって遺伝子群を分類し、酸刺激、アルドステロン刺激の差異を比較する。次に転写因子群に注目して遺伝子発現制御ネットワークを構築し、酸刺激特異的、アルドステロン刺激特異的に調節する転写因子を推定する。候補となる転写因子がなかった場合には、細胞内刺激伝達経路に関連する遺伝子群の相互ネットワークを構築し、酸刺激あるいはアルドステロン刺激により特異的に活性化される刺激伝達経路の同定を行い、中心的役割を果たす候補遺伝子を選定する。
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