研究実績の概要 |
食道扁平上皮癌では、早期よりリンパ節転移を伴い、化学療法、放射線療法、手術療法の併用による集学的治療が生命予後の改善に寄与している。術前化学療法の有用性も報告されたが、抗癌剤がほとんど奏効しない症例もあり、抗癌剤耐性に関連するバイオマーカーの検索、その機序の解明が課題である。抗癌剤耐性に関与する遺伝子の報告は少なく、不明な点が多い。本研究では、Warburg effect 関連遺伝子の中で、抗癌剤耐性に関与する因子を検索し治療への応用を検討することを目的とした。On line data baseを用いて解析したところ、食道扁平上皮癌においては、正常粘膜に比較し癌部においてGlut1, Glut3, Glut 14, HK2, PKM2, PDK1の発現上昇が確認された。我々は、食道扁平上皮癌(N=145)の免疫染色において、Glut1の発現は腫瘍深達度、静脈浸潤に関係し、生命予後と関係することを明らかにした。さらに、食道扁平上皮癌におけるGlut1の発現とFDG-PET SUVmaxの関係を調べた。N=86において、Glut1の発現とFDG-PET SUVmaxが相関することを示した。また、Glut1は腫瘍深達度と関係していた。腫瘍の進展に伴い低酸素状態となることでHIF1Aが活性化すると報告されているが、HIF1Aの下流でGlut1の発現が上昇していることが示唆された。FDG-PET SUV maxも腫瘍深達度と強い関係を示しており、HIF1AやMycなどの下流として、Glut1発現上昇を反映している可能性が示された。化学療法前後のFDG-PETは抗癌剤治療効果を反映していると報告されている。そこで、リンパ節転移を有す食道癌症例に対して、化学療法前、化学療法後にFDG-PET を施行した122 例の患者を対象として、化学療法前生検サンプルのGlut1 の発現を評価した。結果、Glut1 の発現が高い症例ではSUVmax 減少率が有意に低かった。同検討により、Glut1はFDG-PET SUVmaxと相関があるばかりではなく、特にGlut1発現高値の症例は、抗癌剤耐性を有する可能性が示された。
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