研究実績の概要 |
コケイン症候群は、紫外線に対するDNA損傷の修復因子に変異を伴う常染色体劣性遺伝病である。その症状は、光線過敏以外にも、神経障害、発育障害、齲歯、皮下脂肪組織の減少当多岐に渡り、出生時に発症している重症例の存在も鑑みて、DNA修復機構の欠損だけでは全ての症状を説明する事が困難な状態である。そこでコケイン症候群の皮下脂肪組織の減少に着目をして、コケイン症候群原因遺伝子のDNA修復機能以外の機能として、脂肪細胞分化における転写調節機能に焦点を当てて検討した。3T3-L1細胞は、Insulin, dexamethasone, 3-isobutyl-1-methylxanthineの3種類の分化誘導因子により脂肪細胞に分化することが知られており、この系を利用して検討することにした。当初、コケイン症候群遺伝子の一つであるErcc6遺伝子を、siRNAを用いてノックダウンすることを計画していたが、十分な発現抑制を確認することができなかった。そこで、新しい遺伝子改変技術であるCRISPR-Cas9を用い、Ercc6遺伝子ノックアウトした3T3-L1細胞の作成を試みた。Ercc6遺伝子の翻訳開始点下流にターゲットRNAをデザインし、CRISPR-Cas9コンストラクトを導入後48時間で細胞を希釈し、クローンを回収してからErcc6蛋白質の発現を確認した。Ercc6遺伝子をノックアウトした3T3-L1細胞では、脂肪細胞への分化誘導に異常があることを、オイルレッドO染色を用いて見いだした。今後分化誘導後のRNAプロファイリングを経時的に検討していく予定である。
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