虚血性心疾患は死因の上位を占め、その病態の解明と予防・治療法の確立は医学のみならず社会的にも急務の課題となっている。その虚血性心疾患の中でも急性心筋梗塞・不安定狭心症は、冠動脈硬化巣(プラーク)の破綻に伴い、血栓が形成されて発症することが明らかとなっており、急性冠症候群と呼ばれている。 本研究では、急性冠症候群発症時における血栓および動脈硬化巣の性状について、心筋梗塞患者の冠動脈吸引血栓標本を分子病理学的に解析を行い、その発症病態を探った。さらには組織構成成分と糖尿病・脂質異常症・高血圧症などの冠危険因子、ならびに服用している抗血栓薬・抗動脈硬化薬との関連性を検討し、虚血性心疾患の治療・再発予防への貢献も目的とした。 平成26年度は、まず急性心筋梗塞患者の緊急カテーテル治療中に得られた吸引物の収集を主に行いつつ、炎症性サイトカインや動脈硬化関連因子の免疫染色など免疫組織化学的分析をおこなった。そして、並行して年齢・性別・前述の冠危険因子、冠動脈造影所見など臨床像との比較検討を行った。その結果、急性心筋梗塞発症時の冠動脈血栓およびプラークの組織性状は血小板やフィブリン・炎症細胞に富み極めて多様であること、吸引物には血栓のみならず約2割に石灰化を伴った動脈硬化巣を認め、性別と多枝病変症例(重症症例)に多いことを明らかにした。 今後は、さらなる組織標本の収集を行いつつ、上記の追加検討を予定している。
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