急性心筋梗塞や不安定狭心症といった虚血性心疾患は死因の上位を占め、その病態の解明と予防・治療法の確立は医学のみならず社会的にも急務の課題となっている。 今回、虚血性心疾患発症における血栓および動脈硬化巣の性状について、心筋梗塞・不安定狭心症患者の冠動脈から、緊急カテーテル治療の際採取された血栓と動脈硬化巣の組織標本を病理学的に検討し、その発症病態を解析するとともに、糖尿病・脂質異常症・高血圧症などの冠危険因子、その他患者背景ならびに予後との関連性を検討した。 約300例の治療中に得られた吸引物を免疫組織化学的に詳細に評価した結果、冠動脈吸引物には石灰沈着を16%に認め、冠危険因子との明らかな関連は認めなかった。その一方で、性別(女性)と多枝病変(重症患者に多い)が石灰沈着の独立した危険因子であることを明らかにした。さらには、吸引物内の石灰沈着と院内死亡には関連はないものの、石灰沈着がある場合はカテーテル治療を行っても冠動脈造影上良好な血流を得られない傾向にあった。 これらのことから、吸引内容物内の石灰沈着は、患者背景や臨床像により異なる可能性があること、またカテーテル治療を行っても良好な冠血流を得られない傾向にあるため、中・長期的な予後予測因子となる可能性が示唆された。よって、今後これらの予後調査もあわせて行う予定である。 なお、上記を第79回日本循環器学会学術集会で発表し、現在論文作成・投稿中である。
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