本研究は、看護師を対象とした離職予防対策を検討することを目的に、職業性ストレスによる離職予測と、離職に関連する職場環境要因を明らかにするために、2つの大規模医療法人に勤務する約1000人の看護師に調査を実施した。その結果、努力/報酬比は、先行研究で報告されている一般労働者より低い傾向であった。 調査1 年後の離職の有無の調査と、離職意思及び努力-報酬不均衡、ストレス反応の結果は有意な正の相関があり、離職を一定以上予測できる可能性があることが示唆された。一方で、離職意思と負の有意な相関がある職場のソーシャル・キャピタルやソーシャル・サポートなどを高めることは、離職意思を低減させる可能性があることが考えられる。また、看護師自身が高い専門能力を持ち、生産性が高い状態であれば、離職意思は低く維持できることが示唆された。 これらの結果から離職予防に必要な対策として、個々人に職務満足度の高い働き方を提供することや、職場のソーシャル・キャピタルなどを醸成する必要があることが示唆された。これらの対策は、管理監督者が部下の個性にあった業務を担当させることや、育成や指導などの個別の配慮が必要であると考えられる。同時に、管理監督者は、お互いに支援しあう働きやすい職場風土形成を行うなど、職場全体のマネジメントも重要であり、離職予防の対策を展開するためには管理監督者の役割が大きいことが考えられる。
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