本研究は、訪問看護師が訪問時間内外を通し、独居要介護高齢者の安全な生活のために行っている訪問看護実践の実態を調査すること、訪問看護事業所及び訪問看護師の背景による実践の違いについて明らかにすることを目的に、近畿地方実態調査を行った。それにより、訪問看護師の安全管理に対する意識向上のための教育、地域ケアシステムにおける安全管理の課題の明確化を図り、今後の訪問看護実践の質向上とともに、独居要介護高齢者の安全性の向上に資することを目指した。近畿地方実態調査では、平成27年度に実施したプレテストの結果を得て精錬させた無記名自記式質問紙票を用い、層化無作為抽出により600か所の訪問看護ステーションを抽出し、訪問看護ステーション管理者を対象とした郵送法での調査を行った。 結果、訪問看護師は、身体・精神面のアセスメントを綿密に行い体調管理のためのケアを行う頻度が有意に多く、それに比べてフォーマル・インフォーマルを含めた周囲のサポート体制に関するアセスメント及び連携や協働の頻度が有意に少ない現状が明らかになった。また、訪問看護事業所及び訪問看護師の背景による実践の違いでは、自己研鑽が必要だと考えている訪問看護師ほど安全を意識して実践している頻度が多いこと、加えて、緊急時訪問看護加算の算定があり、認定看護師などの看護師以外の資格がなく、スタッフ数が少ない小規模の事業所に所属する訪問看護師ほど自己研鑽が必要であると考えている状況が明らかとなった。 身体・精神面のアセスメントと体調管理のためのケアは医療職である訪問看護師に求められる重要な役割であるが、独居要介護高齢者の生活上での安全を守るためにはフォーマル・インフォーマルを含めた周囲のサポートとの連携・協働が必要不可欠であることから、今後、連携に関する研究をすすめる必要性と、小規模事業所の訪問看護師をいかに支援するかの検討をすすめる必要性が示唆された。
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