研究課題/領域番号 |
26893244
|
研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
西藤 法子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40735099)
|
研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
キーワード | グリア細胞神経栄養因子(GDNF) / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
私が所属するグループでは、これまで歯髄の局所的再生誘導を目的とした研究を行ってきており、局所的に炎症制御に働く因子の探索が、歯髄・根尖歯周組織の炎症制御と、それに続く再生療法の確立に向けた重要な課題と考えている。グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)は神経組織における強力な栄養因子として神経細胞生存・分化誘導に重要な役割を果たしていることが知られているが、神経組織以外においてもその発現が確認されている。歯の発生段階におけるGDNFの関与、ラット初代培養歯髄細胞や骨芽細胞の炎症応答との関与が明らかにされていることから、歯髄・根尖歯周組織の効果的な再生を誘導するための炎症制御物質としてGDNFを応用するための研究を進めている。 我々は共同研究者から既にアルツハイマー病患者の治療として臨床治験に入っているGDNF分泌カプセルの供与を受けており、これを利用した局所的再生療法を目標として in vitro の実験系を行っている。 カプセルは Human Endothelial SFM 無血清培地に浸漬し恒温器内で管理している。カプセル内にはGDNF を恒常的に発現するヒト網膜色素上皮細胞が封入されており、カプセル微小孔を介して内部への栄養供給と外部への産生GDNF放出が行われる。まず私は、ELISA法を用いて5ヶ月以上カプセルからGDNF 分泌が持続していることを確認した。さらに、共同研究者(米国NsGene社)と今後の研究について検討し、GDNFの炎症応答への影響に加え、細胞生存への影響を検討することとした。無血清下の環境で、カプセルから分泌されたGDNFを含むHuman Endothelial SFM 培地を添加しながらラット象牙芽細胞様細胞(KN3細胞)を1週間培養したところ、GDNF非存在下・無血清下で培養した細胞と比較して明らかに細胞生存率が高いことが認められた。今後、GDNFによる細胞生存メカニズムの検討を開始する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はGDNF分泌カプセルを管理する環境の整備をした後、共同研究者(米国NsGene社)からGDNF分泌カプセルの供与を受けた。カプセルからの、5ヶ月以上に渡る恒常的なGDNF分泌をELISA法で確認後、カプセル浸漬培地を用いた実験を開始した。分泌GDNFを含む無血清培地で象牙芽細胞様細胞(KN3細胞)を培養したところ、GDNF非存在下・無血清下で培養したKN3細胞と比較して明らかに細胞生存が延長していることを明らかにした。これらの結果は平成27年度の学会で発表する予定である。以上より、本研究目標を達成する上での基盤となる研究成果は得られたと考えている。現在、カプセル内に封入されている GDNF 分泌細胞とコントロール細胞の供与も受けELISA法にて GDNF 分泌を確認しているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
無血清下で、各種細胞に対して分泌GDNFを含むカプセル浸漬培地の影響を1週間で行ったが、さらにGDNF存在下・無血清下での培養期間を延長して2週間行い、細胞増殖をWST-8 assay、細胞生存率をTrypan Blue染色法にて検討する。その後、無血清下、GDNF存在下・非存在下で培養した細胞を1%血清存在下に戻して細胞増殖能を確認し分泌GDNFの影響を検討する。また、GDNF分泌カプセルと各種細胞をトランズウェル等で共培養し、持続的なGDNFの細胞生存への影響を検討する。さらに、GDNF 刺激による細胞生存メカニズムについて明らかにするため、細胞周期や関連タンパク質の発現について検討していく。カプセルについてはこれまで通り管理し、GDNF 分泌能の測定も適時行う。 カプセル内部に封入している細胞株を用いた実験も平行して行う。具体的には、GDNF分泌細胞と各種細胞を無血清下で共培養して細胞生存への影響を検討する。さらに、TNFalpha等のサイトカインによる刺激がGDNF分泌細胞に与える影響について検討する。
|