研究課題/領域番号 |
26893248
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
横田 潤 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (60733730)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | MSC / TGF-β / PDGF / 遺伝子導入 |
研究実績の概要 |
成長因子を利用した骨再生療法は、個々の成長因子における作用強度の差異や、異なる半減期を補完するための反復投与の必要性が問題視され、効果的な臨床応用には至っていない。本研究では、これらの問題点を解決するために、in vivo遺伝子導入法に着目する。また含有する個々の成長因子を単独で用いた骨再生促進効果に関する断片的な報告はあるものの、成長因子の組み合わせによる骨分化促進効果については、TGF-β誘導性の骨分化をPDGF、 IGF-Iが促進するという報告がある。一方、これら複数の成長因子を融合タンパクとして同時に作用させる試みや、in vivo遺伝子導入法を利用した骨再生療法に関する報告は存在しない。さらに複数の成長因子の効果を効率よく作用させるためにTGF-βとPDGFの組換え融合タンパクを構築する。すなわちTGF-βとPDGFの融合タンパクの発現ベクターを骨欠損部へin vivo遺伝子導入することにより、骨欠損部のみで効果的に発現・作用させることが可能となる。 現在までpTGF-β-PDGF-FLAG;GFPのベクター作成と共に、その他の成長因子としてVEGF、TGF-βとの同時刺激による骨芽細胞への分化促進の影響を検討したところ、相乗的に未分化間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を促進させ、その結果はアリザリン染色による石灰化能の評価や、骨分化マーカーのmRNA発現、細胞内シグナルについても明らかとなった。 in vivoでは現在、in vivo 導入試薬を用いて、ラット頭蓋骨に人為的に形成した骨欠損部にポジティブコントロールとしてBMP-2の遺伝子導入を行い、マイクロCTによる観察を行った。左右の側頭骨に直径5㎜の骨欠損に対し、一方にはBMP-2を他方には対照として生理食塩水を注射した。マイクロCTによる観察では、遺伝子導入によって骨形成が促進される傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pTGF-β-PDGF-FLAG;GFPのベクター作成が難航しており、現在まで未分化間葉系細胞を用いた適正な遺伝子導入法の検討中である。リポフェクタミンを用いる方法を基準として、エレクトロポレーションによる方法を比較検討してきた。その結果、導入効率の面からエレクトロポレーションの方が有効だが、細胞に対する影響が大きく、各種導入方法を検討中である。一方、当初の予定ではPDGF, TGF-βについて注目していたが、VEGF, TGF-βとの同時刺激による骨芽細胞への相乗効果について検討し、現在までアリザリン染色による石灰化能の評価や、骨分化マーカーのmRNA発現、細胞内シグナルについても明らかとなった。 in vivoでは現在、in vivo 導入試薬を用いて、ラット頭蓋骨に人為的に形成した骨欠損部にポジティブコントロールとしてBMP-2の遺伝子導入を行い、マイクロCTによる観察を行った。左右の側頭骨に直径5㎜の骨欠損に対し、一方にはBMP-2を他方には対照として生理食塩水を注射した。マイクロCTによる観察では、遺伝子導入によって骨形成が促進される傾向が認められたが、使用したプラスミド濃度が高かったためか、対照側の骨再生にも影響が出た可能性があり、データのバラつきが大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroでのベクター作成ならびに未分化間葉系細胞への骨分化能の影響を研究の主体とすると共に、現在まで明らかとなったVEGF, TGF-βとの同時刺激による骨芽細胞への相乗効果も引き続き検証する予定である。 本法で用いた、Direct in vivo gene transferを用いた遺伝子導入法では欠損部周囲から漏洩したこと、プラスミド濃度が高かったことで結果のばらつきが生じたと考えられる。そこでin vivo用拡散導入遺伝子薬を用いた骨形成の検証を予定している。具体的に、同手法にて欠損作成後、BMP-2-DsRed遺伝子搭載ナノデバイスを骨欠損部の骨膜下へ補填し、遺伝子導入を行う。DsRedの傾向を共焦点レーザー顕微鏡にて観察し、その導入効率と局在を解析する予定である。また骨再生の状態をマイクロCTによるエックス線画像による評価、組織切片による細胞レベルでの形態学的、組織学的評価を行う予定としている。また、現在作成中のベクター完成後、同様の手法にて動物実験を進める。
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