本研究は、緩和ケア病棟の熟達看護師が死にゆく患者との心理的距離をどのように形成しているかについて、構成要素を抽出し、その関係性を示し記述することを目的としている。 平成29年度の計画は、緩和ケア病棟勤務経験のある熟達看護師に研究協力を依頼し、同意の得られた看護師にインタビューを実施すること、本研究の目的に沿って分析し結果をまとめることであった。 平成29年度は、研究協力者への研究依頼およびインタビューを実施した。研究協力者は、本研究の示した熟達看護師に該当する緩和ケア病棟勤務経験のある看護師であり、研究協力への同意が得られた7名にインタビューを実施した。インタビュー内容は、緩和ケア病棟において印象に残る患者とのエピソードについてであった。語られた内容は、許可を得てICレコーダーに録音し、逐語録に起こした。 分析は、語られた10の各エピソードについて、コーディングを行い、カテゴリー化し、看護師が患者とどのような心理的距離を形成していたかという視点からエピソードの様相を明らかにした。そして、各エピソードの類似性と相違性を見出すことにより、看護師が形成する心理的距離の特徴を示す要素を抽出し関係性を検討した。 分析の結果、緩和ケア病棟の熟達看護師が、死にゆく患者の気持ちを支える生への支援等を実施するために形成している心理的距離の構成要素が抽出され、患者の向く方向に寄り添った死にゆく過程を共に伴走している構造が明らかになった。
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