研究課題
本研究は、全トランスレチノイン酸(ATRA)による蛋白質アセチル化を介した急性前骨髄球性白血病(APL)細胞の分化誘導の分子メカニズム解明を目的としている。これまでにATRAがAPL細胞を分化誘導する際に、ヒストンアセチル基転移酵素PCAFの発現を亢進させること、PCAFがATRAによるAPL細胞の分化誘導に必要でありことを明らかにした。さらに平成26年度で、アセチル化プロテオーム解析を実施し、ATRAによりアセチル化修飾を受ける、PCAFの基質蛋白質候補を同定した。平成27年度では,エレクトロポレーションを用いてAPL細胞株NB4内でPCAFを過剰発現し、好中球分化マーカーであるCD11bの発現がmRNAレベルで亢進することを発見した。これによりPCAF発現亢進がAPL細胞の分化誘導に必須であることを明らかにした。次に、ATRAによるPCAF発現が核内で亢進することを見出した。この結果から核蛋白質がPCAFの基質であると考え、アセチル化プロテオーム解析で得られた核蛋白質のうち,これまでにPCAF基質として報告されているヒストンH3に着目したところ、ATRAによりヒストンH3のアセチル化が経時的に亢進することがわかった。さらにATRAにより、ケモカインのひとつであるCCL2の発現が亢進することを突き止め、これがPCAFにより制御されることを明らかにした。以上からATRAにより誘導されたPCAFはヒストンH3などの基質蛋白質をアセチル化し、その下流にあるCCL2などの発現を亢進させ、APL細胞を分化誘導している可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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