全トランスレチノイン酸(ATRA)は、急性前骨髄球性白血病(APL)細胞を分化誘導するが、その詳細な分子基盤はいまだ明らかではない。ヒストンアセチル基転移酵素PCAFの過剰発現が、APL細胞株NB4細胞において好中球分化マーカーの発現を誘導したことから、PCAFがAPL細胞の分化誘導に必須であることが明らかとなった。またATRAは、白血病細胞を分化誘導する際にPCAF基質蛋白質をアセチル化し、さらにPCAFはATRA標的遺伝子の発現を制御した。以上の結果はATRAが、PCAFを介した基質蛋白質のアセチル化と下流遺伝子の発現制御によりAPL細胞を分化誘導していることを示唆している。
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