研究課題
H26年度は、これまでに確立した野生型マウスの生体電気信号(脳波、眼電図、筋電図(頸筋・咬筋)の長時間記録システムを用い、「睡眠・覚醒パターンにおける頸筋・咬筋の活動性の解析」、睡眠時ブラキシズムの発症メカニズム解析の基盤研究を行った。咬筋および頸筋の24時間での筋活動量の推移をみると、覚醒時、ノンレム睡眠時に咬筋および頚筋の筋活動量は、暗期から明期での切り替えで、有意に筋活動量が低下することが分かった。また、咬筋および頚筋の筋活動量は覚醒時に高く、ノンレム睡眠、レム睡眠時で有意に低下していた。咬筋と頚筋の筋活動が似たような傾向を示したので、次に咬筋および頚筋の筋活動量の相関関係を検討した。その結果、暗期明期のノンレム睡眠時では咬筋の筋活動と頚筋の筋活動は相関関係が認められた。一方で、覚醒時とレム睡眠時において、咬筋と頚筋の筋活動は相関関係は認められなかった。暗期明期のノンレム睡眠時の散布図を対数表示にしたところ、咬筋の筋活動量の低い値と高い値で2つの群に分かれていることが分かった。次に咬筋と頚筋の筋活動量の分布を、ヒストグラムを作製して検討した。その結果、暗期明期の咬筋の筋活動では、覚醒時とノンレム睡眠時で明らかな2峰性の分布を示し,頚筋の筋活動は、覚醒時、ノンレム睡眠時、レム睡眠時でそれぞれ1峰性の分布を示した。以上の結果から、マウスの咬筋および頸筋の筋活動量は、明暗期リズム、いわゆるサーカディアンリズムと睡眠―覚醒リズムの制御機構の影響を受けるが、睡眠―覚醒リズムの制御機構の影響をより強く受けていた。また、咬筋筋活動量は覚醒時だけでなくノンレム睡眠時でも2峰性を示したことから、咬筋は、覚醒時の下顎の維持や咀嚼運動などの多様な運動に関与するだけでなく、ノンレム睡眠中に少なくとも2種類の入力に受けていることが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
野生型マウスの生体電気信号を24時間以上記録できるシステムを構築しており,またその飼育環境もおおむね良好である.生体電気信号を記録するための電極等の道具も充実していることから,順調に研究は進行していることが言える.
ブラキシズムモデルマウスの作製とその解析近年、抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)が睡眠時ブラキシズムを誘発すると示唆されている。そこでマウスにSSRIを投与(急性投与、慢性投与)し、頸筋および咬筋の筋活動を24時間記録して、コントロールと比較してどのような違いがあるか解析する。その結果から、SSRIを投与したマウスが睡眠時ブラキシズムモデルマウスとして有効かどうか検討する。【研究が当初の予定通り進まない時の対応】SSRIの作用が認められなかった場合、向精神薬、ドーパミン関連薬物、カルシウム拮抗薬など、中枢神経に作用するさまざまな薬物も睡眠時ブラキシズムを誘発することが知られているので、代替して検討する。サーカディアンリズム障害モデルマウスの作製とその解析体内時計は視床下部に存在する視交叉上核とよばれるごく限られた領域の神経細胞群が形成していることが知られている。マウスは12時間毎切り替わる明暗サイクルの環境下で飼育すると、視交叉上核は暗期(マウスにとって活動期)に活動性が低く、明期(マウスにとって休息期)に活動性が高くなる。視交叉上核を破壊したラットは睡眠・覚醒などの生体リズムの形成は崩壊することがわかっている。しかし、申請者が着目している睡眠時ブラキシズムとサーカディアンリズムの詳細な検討は行われていない。そこで、申請者は、マウスの視交叉上核をイボテン酸にて薬理学的に破壊し、その時の咬筋の活動性を24時間記録し詳細に検討する。【研究が当初の予定通り進まない時の対応】視交叉上核は視床下部に近接し、イボテン酸の局所投与が少しでも部位が違うと、致死になる可能性が高い。その際は、イボテン酸による破壊ではなく、電気的焼失法により破壊する。
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