幹細胞を利用した再生医療は臨床医学分野で非常に注目されている。近年ではiPS細胞から必要な分化誘導された細胞を利用することも行われているが、臨床現場で生体組織から供給される代表的幹細胞として脂肪幹細胞がある。腹部皮下組織などから簡便に採取され、かつ比較的大量に確保可能である。また、再生の足場と成り得るハイドロキシアパタイト(HA)は歯牙・骨等の硬組織の主要成分であり、骨造成材料として既に整形・形成外科や歯科領域で臨床応用されている。さらに骨折修復時に超短波や低周波治療といった理学療法は従来の整復・固定術に組み合わせる事で骨修復の促進が図れる事が解っている。本研究では、頭頸部領域の各種疾患により形成された硬組織欠損の再生・再建に際して、頬脂肪体由来幹細胞を使用し、ハイドロキシアパタイトの中でもナノサイズ粒子形成によって表面積の増大が図られたナノハイドロキシアパタイト(NHA)添加を行い、さらに理学療法の1つであるLow Intensity Pulsed Ultrasound (LIPUS)照射を組み合わせることにより、効率的な骨修復・再生手法を開発することを目的とした。 結果としてLIPUSとNHAと脂肪幹細胞の三者併用により優位な骨増生を確認することができた。今後は、現在の頭頸部領域の機能再建において非常に有益で魅力的な選択肢の1つであるインプラント技術に対しても応用できるよう研究の継続によってインプラント再建への利点が解明されれば、より高度な骨欠損をもった患者のインプラント治療に対する可能性を広げることとなる。
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