研究実績の概要 |
高尿酸血症は痛風の原因や心血管障害の危険因子であるとされる一方、疫学的には高めの尿酸値が神経変性疾患尿酸の発症および症状の進行を抑制することが報告されており、尿酸がその抗酸化作用により神経保護的に働くと考えられている。しかし、脳内の尿酸が何に由来するのか、またその濃度制御機構は明らかになっていなかった。研究代表者はこれまでに腎臓で尿酸の再吸収に関わる尿酸トランスポーターURAT1が脳内において脳室上衣細胞脳室側膜に局在することを明らかにしている。本研究では脳脊髄液から上衣細胞を介して脳実質に至る尿酸輸送が存在する可能性を検証することを目的とした。 本年度は1) 脳室上衣細胞における尿酸トランスポーターの発現解析および2)マウス脳脊髄液中尿酸濃度測定系の構築を行った。1) 腎臓近位尿細管細胞において尿酸輸送に関わる主要なトランスポーターであるGLUT9/URATv1, ABCG2に関して免疫染色を行ったところ、脳室上衣細胞ではGLUT9/URATv1の染色シグナルが検出され、ABCG2に関しては明瞭な染色シグナルは見られなかった。抗GLUT9/URATv1抗体の特異性は抗原吸収試験にて確認した。2) マウスをイソフルランで麻酔し、大槽穿刺により脳脊髄液を採取する方法を確立した。本実験ではヒトとほぼ同じレベルの血中尿酸値を示すウリカーゼノックアウトマウスを用いており、血中に比べて低濃度であると予想された脳脊髄液中の尿酸濃度もHPLCを用いて測定することが可能であった。
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