今年度は、研究対象者の募集、データ収集、分析を実施した。研究実施にあたり、当該大学倫理審査委員会の承認を受けた。 対象者は大学生40名とし、各自のスマートフォンアプリケーション上で5日間にわたり食事記録を作成するとともに、3名ずつのグループ内でソーシャルメディア機能を用いた相互フォローとコメント欄を用いた意見交換を行った。また、食事記録を作成する前、直後、1か月後にウェブ調査を行い、食生活について考える頻度と自己評価(いずれも7段階評価)、自己の食生活の長所と課題(自由記述)、本プロジェクトの感想と改善点(自由記述)等について回答を求めた。 対象者のうち食事記録作成と全てのウェブ調査を完了した38名を分析対象とした。食事記録作成・相互フォローを経て、対象者の食生活について考える頻度は増加し、1か月後に漸減した。また、食生活に関する自己評価は食事記録作成後に低下し、1か月後に漸増した。自己の食生活の長所と課題に関する自由記述は、食事記録作成前は全員が無記入または一文のみの記述であったのに対し、食事記録作成後は具体的かつ詳細な記述内容に変化し、特に「食事の栄養バランス」「より多くの食品・食材の摂取」について記述していた。本プロジェクトの感想に関する自由記述から、対象者全員が楽しみながら自己の食生活の課題を発見し、8割以上の対象者が対象者間の相互作用によるエンパワメントを経験していた。以上の結果から、ソーシャルメディアの活用が大学生の食生活改善に一定の役割を果たすことが示唆された。一方で、食事記録を作成する手間と時間、匿名のメンバーとの相互作用の限界も指摘された。 また、本研究と同様の取組を目指すスウェーデンのUniversity of Gothenburg に客員研究員として滞在し、本研究を国際比較研究として発展させるための研究会議やセミナーを複数回実施した。
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