研究課題/領域番号 |
26893286
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
秋山 祐子 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (90735622)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 間葉系幹細胞 / gap junction |
研究実績の概要 |
本研究では,in vitro共培養システムを用いて,gap junctionを介した骨芽細胞による間葉系幹細胞の遺伝子発現制御機構について検討した。 骨芽細胞および間葉系幹細胞として,マウスMLO-A5およびC3H10T1/2を用いた。GFPを安定発現するC3H10T1/2(10T-GFP)を樹立し,この細胞とMLO-A5を培養ディッシュ上で共培養した。共培養後にセルソーターを用いてGFP発現細胞(10T-GFP)を単離し,網羅的な遺伝子発現解析(マイクロアレイ)を行った。さらに,骨芽細胞分化誘導サイトカインであるBMP2で10T-GFPを刺激し,遺伝子発現変動パターンを比較した。 その結果,共培養した10T-GFPでは,骨芽細胞マーカーであるALPおよびBSPの発現量が顕著に増加していた(約300~400倍)。この発現量の増加は,BMP2刺激の40~60倍であり,gap junction阻害剤によって抑制された。 パッチクランプアッセイから,隣接する10T-GFPとMLO-A5の間に通電が確認され,gap junctionの存在が示された。マイクロアレイデータを用いたGene Ontology 解析による機能分類では,遺伝子発現変動パターンはBMP2刺激によるものとは大きく異なっていた。最も発現量が増加した上位50遺伝子には,ストレス応答性因子および細胞接着関連因子が多く含まれていた。 本研究で得られた結果から,骨芽細胞はgap junctionを介して,間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化を誘導することが示唆された。さらに,この分化誘導は,BMP2とは異なるシグナル経路を介したものであり,ストレス応答性因子および細胞接着関連因子が重要な役割を担うことが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当該実験施設ですでに確立された実験系を用いたため,実験遂行における技術的な問題は生じなかった。また,マイクロアレイ解析とそのデータマイニングを業者に委託したことによって,効率的に研究を進めることができた。その結果,培養骨芽細胞であるMLO-A5はgap junctionを介して,間葉系幹細胞のC3H10T1/2細胞の骨芽細胞への分化を誘導することを明らかにすることができた。さらに,この分化誘導は,BMP2とは異なるシグナル経路を介したものであり,新規の骨芽細胞分化誘導シグナルの存在を示唆するデータを得ることができた。これらの研究成果は,初年度の研究目標を達成していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,おおむね順調に進展していることから,研究計画通りに推進する。 具体的には,得られたマイクロアレイデータを基にして,発現量変化の著しい因子をリストアップし,既存のデーターベース上の遺伝子機能情報を参考に,骨芽細胞分化に関与する可能性が高い遺伝子を絞り込む。次に,real-time PCR を用いてそれら候補遺伝子の発現量を確認する。また,Western blot 法,ELISA 法等を用いてタンパク質レベルでの発現量の変化も確認する。 上記の実験の結果,発現量変化が確認された遺伝子について機能解析を行う。具体的には,対象遺伝子の強制発現やsiRNA などによる発現抑制を行い,細胞増殖,骨芽細胞への分化に対する影響を検討する。遺伝子導入については,リポフェクション法を用いる。本研究で用いる培養細胞は,リポフェクション法で良好な遺伝子導入効率を得ている。 さらに,ゲノムDNA のメチル化やヒストンのアセチル化などのクロマチンのリモデリング(エピジェネティックイベント)は,細胞の分化や遺伝子発現に密接に関与することから,共培養した細胞と単独培養した細胞において,これらの解析を行う。ゲノムDNA のメチル化は抗メチル化シトシン抗体を用いたSouth-Western Dot-blot 法やBisulfeite Sequencing 法を用いる。ヒストンのアセチル化は,抗アセチル化ヒストン抗体を用いたWestern blot 法によって解析する。
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