研究課題
本研究では、歯髄炎に伴う異所性異常疼痛の発症機構を解明する目的で、歯髄炎モデルラットを作製し、行動解析、三叉神経節細胞の活動性変化および各種物質の合成変化に関して、三叉神経節細胞間の機能連関という観点から免疫組織学手法および生化学的手法を用いて検討することを計画した。これまで歯髄炎が引き起こされると、炎症歯髄を支配する三叉神経節細胞活動が著しく亢進することにより三叉神経節細胞にToll-like Receptor 4(TLR4)が強く発現し、舌に異所性異常疼痛が発症することを報告した。さらに、Heat shock protein70(HSP70)(TLRのリガンド)が炎症歯髄組織で合成されて三叉神経節に運ばれ、三叉神経節細胞から放出されて口腔顔面領域を支配している三叉神経節細胞に存在するTLRに結合することによって、炎症歯髄神経を支配する三叉神経節細胞だけでなく、その周辺部に存在する三叉神経節細胞にも作用し、活動性の増強をもたらすことを明らかにしている。26年度のプロジェクトにおいて、まずCFA歯髄投与後、舌の熱および機械刺激に対する逃避閾値を経時的に計測したところ、3日目において最も有意な閾値の低下を認められた。また、CFA歯髄投与後の三叉神経節において、多くのTRPV1陽性細胞およびHSP70陽性細胞を認めた。さらに、TLR4阻害薬の三叉神経節内連続投与により舌の熱および機械刺激に対する頭部引っ込め反射閾値の低下が抑制された。また、CFA歯髄投与後、舌へのTRPV1アンタゴニスト(SB366791)投与により,舌の熱刺激に対する頭部引っ込め反射閾値の低下が抑制された。
3: やや遅れている
本プロジェクトは、26年度の計画として、CFA歯髄投与による舌の組織学的変化の解析やNF-kB阻害薬の三叉神経節内投与による行動薬理学的解析を行う予定であったが、十分な結果が得られていない。その理由の1つとして、舌の組織は筋線維であり、固定ができず保存が難しい事があげられる。今後の改善策として脱血からの凍結をいかにスムーズにできるか実験方法の工夫が必要であると考える。また、現在三叉神経節内におけるNF-kBの発現量を確認している段階であるため、阻害薬を用いての行動薬理学的解析は現在の実験が終わり次第遂行する予定である。
CFA歯髄投与による舌の組織学的変化の解析として、CFA歯髄投与後に舌を摘出しHE染色にて組織学的変化を解析する。また、CFA歯髄投与後、継時的に舌組織のTRPV1陽性神経終末の形態学的変化およびリン酸化TRPV1陽性神経を免疫組織学的に解析し、発現量をWestern blot法にて定量する。NF-kB阻害薬またはpERK阻害薬の三叉神経節内投与による行動薬理学的解析において、あらかじめ頭頂部よりカニューレを刺入し三叉神経節内に留置し、NF-kB阻害薬 またはpERK 阻害薬を三叉神経節内に連続投与する。CFA歯髄投与後、経日的に浅麻酔下にて機械的および熱刺激に対する逃避閾値の計測を行い、各種阻害薬の三叉神経節内連続投与により機械または熱痛覚に変化がおこるかを検索する。また、TLR4阻害薬, NF-kB阻害薬またはpERK阻害薬の三叉神経節内投与によるTRPV1受容体およびリン酸化TRPV1受容体発現解析、NF-kB acceleratorまたはpERK acceleratorの三叉神経節内投与によるTRPV1受容体およびリン酸化TRPV1受容体発現解析および行動薬理学的解析およびWhole cell patch clampを用いた舌投射神経細胞の興奮性変化の解析をも行っていく予定である。
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PLoS One
巻: 9 ページ: 1-11
10.1371/jourinal.pone.0109168