慢性心不全患者が最期まで望む生き方を支援するためには、患者個別の病みの軌跡の局面を捉え、局面に応じた最適な看護を実践することが必要である。本研究は医療・ケアの方向性の確認や変更等において重要な局面である「末期状態」を、看護師が何を手掛かりとして捉えているのか、その結果どのような看護実践を行っているのかを明らかにすることを目的とした。循環器看護の経験豊富な看護師8名を対象に半構造化面接を行い、インタビュー内容を質的帰納的に分析した。看護師はこれまで末期状態の判断基準として示されてきた「治療が無効となる」「前回入院から次の入院までの期間の短縮」といった医学的判断基準の他に、<長年行ってきた健康管理が身体の「しんどさ」から続けられなくなる><再入院の要因が変化する><今までどおりの日常生活動作だけでも症状悪化を来す><今までよりも多くの休息が必要になり日常生活動作にいつも以上に時間がかかる><食事のとり方や横になっている時間が増えるなど1日の過ごし方が変化する>など慢性心不全患者の末期状態を多面的に捉えていることが明らかとなり、患者の「生活」を通して末期状態を捉える看護独自の判断のあり方が示された。また、看護実践としては《モニタリングのフィードバックを通して患者の身体の変化への気づきを待つ》《患者の病気に対する思いを聞いていく中で身体の変化への気づきを促し、患者の望む過ごし方について引き出す》《ケア方針共有のために多職種にも末期状態であることへの気づきを促す》《「苦しい症状を取れる」ことを患者に前もって情報提供する》《これまで強調してきた日常生活管理の指導から管理の方法を「緩める」など今後を楽に過ごしていける方法を患者に提案する》《患者・家族への今後の経過に関する説明を医師に促す》などが示され、やがて来る終末期を見通して看護師がケアのあり方を意図的に変化させていることが示された。
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