Cathelicidinは受容体であるFormyl peptide receptor 2 (Fpr2)を介して、免疫細胞の遊走や、組織形成・修復など様々な生理作用を発揮することが報告されている抗微生物ペプチドである。。本研究では、歯胚の発生時および、歯の損傷時におけるCathelicidinおよびFpr2の発現および機能に関しての解明を目的に検討を行った。 ラット上顎臼歯におけるCathelicidinおよびFpr2の局在を免疫組織学的手法により、経時的に観察を行った。象牙質形成の始まっていない胎生期の歯胚ではCathelicidin、Fpr2ともに局在は確認できなかった。しかし、生後3日の鐘状期後期の歯冠部象牙質形成部位の象牙芽細胞でCathelicidin陽性細胞が、それより下層の部位でFpr2陽性細胞の局在が観察された。さらに歯胚の形成が進み、歯冠部の象牙質形成が終了すると、象牙芽細胞におけるCathelicidin陽性反応は認められなくなるが、Fpr2は象牙質形成の完了後も、象牙芽細胞層下層において局在は維持されつづける。 次にラットの上顎臼歯に歯科用エンジンを用いた歯の切削刺激により歯髄に損傷を与えた。歯髄修復過程におけるcathelicidiおよびFpr2の局在を免疫組織学的に検討を行った。Cathelicidin陽性細胞は、歯髄の組織修復が開始される切削刺激3日後より損傷部歯髄近傍に浸潤が認められた。さらに、切削刺激1週間後の修復象牙質形成部位でCathelicidin陽性細胞の局在は認められた。Fpr2陽性細胞は、修復象牙質形成部に近接して存在が確認された。 以上の結果から、Cathelicidi-Fpr2シグナルが歯の発生時における象牙質形成および、歯髄損傷後の修復象牙質形成に関与している可能性が示唆された。これらの結果をまとめ、論文として投稿する予定である。
|