研究課題/領域番号 |
26893307
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
渡辺 知恵 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (30737747)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 腸管粘膜再構築モデル / DDS / 核酸 |
研究実績の概要 |
本研究では、薬物動態学や動物代替法の開発の観点からも重要な課題の一つであるin vitroにおける三次元腸管粘膜層再構築モデルの確立と、腸管吸収性の異なる物質や核酸製剤等をモデル医薬品とした再構築モデルの基礎的評価を進めている。 三次元細胞培養法による生体再構築モデルの作製は、再生医療分野のみならず様々な分野での応用が期待されていることから、現在開発が盛んに進められ注目されている。一般的に薬物腸管吸収モデルに汎用されるヒト大腸上皮系癌細胞単層モデルでは、粘膜層が寄与する非撹拌水層や、脈管系への薬物移行過程が反映できず、in vivoにおける吸収動態予測および評価系モデルとしては不十分であった。特に、核酸医薬品等の経口製剤化が困難な医薬品開発において、腸管における吸収動態解析は必須であるが、in vivoでの吸収過程解析は容易ではないため、本モデルの作製は、医薬品透過機構の解明や、吸収促進剤の評価に資して、医薬品開発に重要な意義を持っている。 初年度の本研究では、細胞集積法を用いて、ヒト腸筋繊維芽細胞を各種の細胞外基質でコーティングして集積することにより複数層からなる下層を作製し、その上部にヒト大腸上皮系癌細胞の単層を積層した腸管モデルを基礎モデルとして作製した。次に大腸系腸管基礎モデルの積層内に、ヒト大腸血管内皮細胞によって形成される血管走行する層を挟み込み、血管走行型大腸系腸管モデルを作製した。さらに、より実際の動物の腸管に近い状況を模倣するため、ヒト大腸上皮系癌細胞上に代替粘液層となる水性ゲルを積層したモデルを作製した。 次年度は、初年度に引き続き、脈管系走行腸管モデルおよび粘液層腸管モデルのさらなる改良と、作製した腸管モデルを用いた核酸製剤やモデル化合物の腸管透過性、吸収過程の解析を行い、最適な製剤処方を予測し、動物実験にフィードバックする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管基礎モデルを構築していく段階で、細胞の違いによる条件の相違(接着性、細胞外基質との相性、細胞自体の重量密度などに起因すると考えられる)が予想以上に大きく、当初、腸管モデルを数日にわたって維持することが困難であった。しかし、種々の条件の細かい検討と、これまでと全く異なった強力な接着分子を用いて構築を試作・検討を行ったことにより、最終的に1週間以上の腸管基礎モデルの維持が可能となった。このことにより、この基礎モデルに血管走行層を挟んだモデルの構築が可能となった。 細胞自体の性質の違いによる条件の相違は、不可避であり、その条件を調整するのに、時間を割いたが、結果として、課題が克服でき、現在は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに確立できた腸管基礎モデル、および血管走行腸管モデルを元に、引き続き、計画に準じて、リンパ管走行構築モデル、ヒト正常腸上皮細胞(InEpC)細胞による改良型モデル、粘液分泌細胞を加えた粘液層積層モデルの作製を続け、これらの構築と並行して、当該研究の最終目的である吸収性および分子量の異なる物質やオリゴ核酸分子などのモデル医薬品を用いて、吸収促進剤等も併用して、吸収動態の基礎的評価を行う予定である。 異種の数種の細胞を同時に培養することになるため、培養条件の調節と確認が適宜必要であり、特にInEpC細胞は培養条件(温度)が異なるので、難しいかもしれないが、増殖因子や接着因子,pHなど種々の条件調節を行うことにより、克服できうると考えている。
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